ここでは新しいF/W4.0以降によるRWX(.DC)、RWP、RZS.D(C)での高精度なポール傾斜補正について説明します。
当社の実験では傾斜角 30°で水平較差< 2cm (1σ) (校正から30秒以内、アンテナ高 < 2m)を実現しています。
新アルゴリズムでは、磁気センサーを使用しないため周囲環境の影響を受けません。お持ちのハードウェアはそのままで、ファームウェアとアプリの更新のみで利用できます。
特徴
- 高精度, 30°傾斜で水平較差2cm以下(1σ)(校正から30秒以内、アンテナ高 < 2m) *1
- アクションスイッチによる、補正のON/OFF切替
- 簡単なアクションにより方位角キャリブレーションが可能
- XパッケージとPパッケージに対応*2
準備
設定
- Drogger-GPSのギアマークアイコンをタップし設定を開きます。
- [計測・更新レート]をタップし[5Hz]を選択します。
- [ヘッディングと傾斜補正]をタップします。
- [DMP用途]-[測量ポールの傾斜補正に使用]と[コンパスにジャイロセンサーを使う]の2つをONにします。
- [傾斜補正アクションスイッチを有効にする]をONにします。
- アンテナ高(ポール先端からアンテナ位相中心までの高さ)をメートルで入力します。(アンテナ高についてはこちらをご覧ください)
- [パッケージ]をタップしお使いの受信機のパッケージタイプを選択します。
ヒント: アンテナ高はとても重要です。傾斜補正を行う際は常に事前に決めたアンテナ高(例 1.8m)になるようにポール高を調整すると良いかと思います。
磁気センサーを使用した傾斜補正
以前よりサポートされていました磁気センサーを使用した傾斜補正は、4.0.1以降のF/Wでも可能です。
磁気センサーを使用した傾斜補正を行いたい場合は、[測量ポールの傾斜補正に使用]をONにしたうえで、[コンパスにジャイロセンサーを使う]をOFFにします。 この場合、アクションスイッチはありません。使用方法は従来の傾斜補正のマニュアルをご覧ください。
電源ONでの初期化
傾斜補正やデジタル水平器を使用する際には電源ONからの初期化を行います。これらを使用しない場合この手順は不要です。
- 受信機を垂直にし電源を入れます。DMP LEDの点滅が点灯に変わるまで(30秒)動かさずに待ちます。このとき手など支えるのではなく動かないように補助具などを使用してください。
ヒント: DMP LEDは電源ONから30秒間点滅するようになりました。 - 広いところでポールの物理的な気泡管を使いポールを垂直にします。
- その状態で、メイン画面の「デジタル水平器」表示部を長押しリセットします。
- デジタル水平器と、ポールの気泡管の両方が概ね合っている状態か確認します。異なる場合は再度2と3の手順を行います。
アクションスイッチ
設定を行っただけでは傾斜補正は行われません。以下の動作をすることで有効になります。この動作によるON/OFFをアクションスイッチと呼んでいます。
それぞれのアクションが完了すると端末はサウンドを鳴らすとともにバイブレーションします。
ONアクション
以下を順に行うことで傾斜補正がONになります。
ONにできる条件 : 測位方式がRTKでFIXしていること
No | アクション | 表示 | 画面 |
---|---|---|---|
1 | ポールを垂直保持する |
SHolded | |
2 | ポールを約30°傾斜して保持する * Roll値が±15°以内 * 先端を地面から離さない |
THolding | |
3 | 校正完了 傾斜補正有効 | TiltCorr |
一連の動作を進めることで傾斜補正が有効になります。有効になると、オレンジ色でTiltCorrと表示されます。
ここでは簡潔に記載しています。合わせて後述する「アクション条件」をお読みください。
OFFアクション
以下を順に行うことで傾斜補正がOFFになります。
- ポールを垂直保持しSHolded状態にします。これで補正は無効になっています。
- ポールを素早く垂直に上に持ち上げてください。「NONE」と表示されOFFになります。
これにより設定を変更することなく有効/無効の切替ができます。
アクション条件
それぞれのアクションには有効になる条件があります。
1 垂直保持
デジタル水平器の気泡がグリーンの状態で1秒以上保持します。
2 傾斜保持
- 傾斜保持は2秒必要です。
- 垂直保持からポール先端を地面から離さずに25°~30°傾斜させます。
- Xパッケージの場合は、受信機LED面を下に倒します。Pパッケージの場合は白い外部電源コネクター側です。自身のほうにLED面や白い外部電源コネクターを向けく手間に引くように傾斜させます。
- デジタル水平器の上のR:に表示されるRollの値が -15から+15°の範囲内になるように傾斜させます。
計測
精度の有効時間と再校正
傾斜補正はジャイロセンサー、加速度センサー、GNSSのセンサーフュージョンによって行われます。ジャイロセンサーにはドリフト誤差があり較差2cmといった高精度で計れるのはONアクションからの時間で短時間です。ジャイロセンサーのドリフト補正はDMP内で動的に行われますが精度よく保たれる時間は一定ではありません。
再校正は簡単です。再度アクションON動作を行うことで校正できます。
精度を高めるためのヒント
以下のようにすることでより正確な測量を行うことができます。
- ONアクションを測点に出来るだけ近い位置で行い、ONになったら素早く測量します。
- 測点にポール先端を当てたら動かいないように保持し、センサー値の収束のために5秒ほど待ってから計測します。
- ゆっくりとした回転や動作はDMPが ジャイロドリフトと誤認する場合があります。測点への移動の間ポールを上下に動かすなどすると精度を長く保つことができます。
- 衝撃は与えない様にします。
- 測点ごとに、ONアクションをするようお薦めします。
- 座標取得する場合は2度以上計測し較差の確認をお薦めします。
- 精度が確保できない場合はポールを概ね垂直にし30秒ほど固定して動かないようにしてください。静止状態を作ることでジャイロセンサーのドリフト補正が自動でされます。
- 可能であれば傾斜させる方角を同じにします。(例 : 常に南向きに傾けるなど ) 補正には無関係な、ポールの曲がり、アンテナ位相中心オフセットなど他の要因による誤差を低減できます。
これらを守りうまく利用いただくことで、いままで出来なかった壁などの際なども精度良く測ることができます。また、杭探しや杭打ちもポール先端のみ振ることで位置の探索ができます。
ナビゲーションモードとの併用
杭探しなどナビゲーションモードモード中にONアクションをすることができます。
ポール方位計
傾斜補正をONにすると、傾いたポールの絶対方位角を知ることができます。マップを回転モードにするとポール先端の方向が常に上になります。
杭探しモードではターゲットまでの線が画面上方向になるようにすると、ターゲットはポール先端方向にあります。そのままその方向に進めばよいことが分かります。
Waypointのデータ取得間隔
計測・更新レートについて、傾斜補正では5Hz以上を推奨していますが、通常の測量では1Hzが標準です。この差を解消するため、Waypointの記録時にデータの取得間隔を指定可能にしました。[Update rate]と[1sec]の2種類から選択できます。
測量法に準拠する場合は1secを選択してください。5Hzの設定でも1秒間隔でデータを取得します。
DMPの更新レート
従来DMPの更新レートは、GNSSの計測・更新レートと同じでしたがF/Wを ver 4.0以降からはGNSSのレートに関わらずDMPの関連のレートは10Hzになりました。これによりデジタル水平器などがレスポンス良く表示されます。
また、DMP関連のNMEAメッセージ(HEHDT PSAT,HPR PRDID PDACM)も出力インタフェースに関わらず10Hzで出力されます。