RTKとは? スタティックとは?
STATICとRTKはどちらも位置を計算するしくみはほぼ同じで、2台の受信機の衛星までの距離を測定したデータを使って、2台の相対的な位置関係を求めます。違うのは いつ計算するか です。 ポイントを要約してみます。
- 2台の受信機の衛星までの距離を測定したデータを使う(観測データと呼びます)
- 2台のデータを解析して相対的な位置関係を求める (相対測位)
- 解析には、電波の波の数を特定する方法で行う(搬送波測位)
- 一方の受信機の位置が分かっていることでもう一方の位置が分かる。
- 位置のわかっている方を基準局とよび、わかっていな方を移動局という。
それでは次に、スタティックとRTKで異なる点を表にしてみます。
| アンテナ位置 | 位置計算 | 精度 | |
|---|---|---|---|
| STATIC | 固定 | ログを取ってあとで位置計算 | mmレベル |
| RTK | 移動 | リアルタイムに位置計算 | mm~cmレベル |
- スタティックは、アンテナ位置を固定し観測データをログに記録し後で解析を行う方式です。
- RTKは、移動OKでその場で位置を計算する方式です。
スタティックの特徴
基準点などの測量では高い精度が求められますので高い精度が得られるSTATICが向いています。また、同時刻に複数点でのログがあれば、一点を複数の基準位置から解析し網平均計算などして求めるなどできます。
特に日本では電子基準点が整備され無料で観測ログをダウンロードできますので誰でも高精度な測量を行うことができます。電子基準点を使うと2台の受信機のうち1台を電子基準点のものが利用できるためとても便利です。
RTKの特徴
リアルタイムに高精度に位置が求まりますので、すぐに位置を知る必要がある場合はRTKが向いています。移動する自動車などでの連続した測位はもちろん、多くの点を素早く次々に測る測量用途などでも利用されます。
移動局では基準局のデータをリアルタイムに受信するための通信装置が必要です。通常はインターネットを利用して通信します。また、基準局を設けたり何らあの方法用意する必要があります。
搬送波による相対測位
ここではスタティックやRTKの位置を求めるしくみを説明していきたいと思います。
以前、搬送波は波そのものを使うと説明しました。その波の計測方法からです。
受信機に届いた波の半端部分は計れる
届いた瞬間は、波の始まりもあれば途中のこともあります。電波は微細な電圧の変位で干渉現象などを使うと、1つの波の中のどの位置かを計ることができます。
衛星までの波の数はすぐにはわからない
ところが、衛星まで何波あるのかは、目印も何もないのですぐにはわかりません。 ただ、半端分を除いた波の数なので整数であることだけはわかっています。 取り合えずコード測位から得た距離を元に仮の波数にします。 この後、複数の衛星を使って方程式を立てて波数を決定するのが、搬送波測位です。 実際には、未知数(整数N)を含む連立方程式を最適化で解く「整数最小二乗法」を使います。
波数の計算と確定
波の数を確定しようとした際に、どうしても(矛盾などで)整数ではなく小数点のある実数になります。実数を英語で言うとFLOATです。整数で確定できたらFIX解と言います。
このFLOAT、FIXはよく使われる言葉です。RTKを行う際は正確にピタッとFIXになって欲しいものです。
相対測位
その2ではSBASなどから誤差量を受けとって精度を向上させる測位方法などについて書きました。 搬送波による相対測位はそれらとは全く異なる方法で精度を向上させます。
相対測位では、もう一台の位置の判っている受信機を使って、2台とも全く同じように衛星までの距離を測ります。

2台の受信機の距離が近ければ、電離層遅延、大気遅延はほぼ同じとみなすことができます。
- 2つの受信機で測った衛星Aまでの距離を引き算すると衛星時計、衛星位置、電離層遅延、大気遅延は消えてしまい、受信機の位置の違いのとそれぞれの受信機内での処置遅延の誤差が残ります。
- 次に、衛星Bも同様の引き算をします。
- 最後に1と2の引き算をします。すると、2つの受信機依存の誤差も消えてなくなります。
残ったのは衛星A、衛星Bの位置差と受信機AとBの位置差のみです。
実際の計算では、最も仰角の高い衛星Aを固定とし、そのほかの衛星を取り換えて引き算を行います。その際、GPSならGPSの衛星だけで引き算を行い他のGalileoとかとの引き算は行いません。
この引き算のあとに複数の引き算結果から整数としてつじつまが合う点を3次元で求めます。この求まった値は受信機AとBの相対的な位置関係です。
シングルディファレンス(一重差)の説明をしましたが、相対測位では2つの受信機で得られた一重差を同じ組み合わせ同士でさらに引き算をします。ダブルディファレンス(2重差)と言います。
この2重差は、1重差では消せなかった、衛星時計、衛星位置、電離層遅延、大気遅延、受信機誤差のすべてが消去されます。まとめると
- シングルディファレンス:衛星関連誤差が消える
- ダブルディファレンス:受信機時計も消える
- 相対座標だけが残る
数学のマジックでとても素晴らしいですね。誤差がどれくらいかはお構いなしです。ただし、それに条件があります。それぞれの受信機で観測したときに、電離層遅延、大気遅延など受信機位置に関係する誤差が同じであることが必要です。
これが、RTKの基準局は近ければ近いほど良いという理由です。近ければ、電波が通る道はほぼ同じで、電離層遅延も大気遅延も同じだからです。
このため、搬送波相対測位の精度は 1cm + 1ppmなどといった表現がされます。1ppmは100万分の1で基準局-移動局間が1km増えるごとに1mm誤差が増えると読みます。
この精度は、前述のとおり、受信機AとBの相対的な位置の精度です。決して座標精度ではありませんので誤解しないようにしましょう。
相対測位の実際
電離層遅延と大気遅延の推定
上記の説明では電離層遅延と大気遅延が受信位置に関わらず同じであればうまくいくことを説明しました。しかし実際には、2台の距離応じて差が出てくるわけです。この違いを推定するのが 電離層遅延と大気遅延を推定し補正を行ってFIX解を求めます。
この推定には少し時間をかけて推定をする必要があり、長基線(受信機間の距離が遠い)ではFIX解を得るまでに少し時間を要します。
混合処理と統合処理
この内容は前述した引き算での詳細です。
先ほど、「GPSならGPSの衛星だけで引き算を行い他のGalileoとかとの引き算は行いません。」と書きました。この方法は異なる衛星群を統合しないので混合処理と呼ばれます。
それに対して統合処理は、例えばGPSとQZSS(みちびき)を同じ衛星群として引き算する方式を言います。この場合でも同じ周波数のみでL1とL2の観測値を引き算するといったことはできません。ですので統合処理でも組み合わせは限定され主にGPS、QZSS、Galileoの統合です。
統合処理は、基準衛星が1つで済むので一見効率がよさそうですが問題もあります。受信機内の仕組みとしてGPSとQZSSとで観測時間にほんのわずかなズレがある場合です。引き算でGPS-GPSとGPS-QZSSで差が出てしまいます。受信機AとBが同じ機種なら良いのですが、異なる場合は誤差を消去できなくなります。これをISB(Inter System Bias)と言います。
統合処理を行う場合、この異なる受信機間にあるISBを測定して解析時に補正を行う必要があります。
1周波と多周波
波数を求めるにあたって、例えばL1では波の長さは約19cmですので答えは19cmごとの3次元の格子状に存在します。次にL2ですと波の長さは約25cmですのでその答えは25cmごとの格子状になります。この2つの波から解を求めると、19cmと25cmの倍数が重なる点のみとなり解の候補が激減します。
これにより多周波の受信機はFIX解を得るまでの速度を速めかつ精度も向上させることができます。
実用的には2周波以上の受信機がRTKの主流になっています。
ミスFIXと対策
未知の波数を求めるという仕組み上、数え間違いがありこれをミスFIXと言います。
- ミスFIXはオープンスカイではほとんど発生しない。
- マルチパスの多い環境は要注意。(マルチパスは壁や地面などに反射して、少し長い経路で届く電波を言います)
しかしながら、衛星はすごい速度で移動していますので、
- 反射波が偶然ミスFIXを引き起こす経路であっても持続することはなく刻々と変化します。
- これを利用し、FIX解による座標を得たあと受信機を初期化して再度FIX解により得た座標と比較します。
- この差がほとんどなければOKですが大きな差がある場合はミスFIXがあります。
Drogger GPSアプリでは「GNSSホットリスタート」を行うことで受信機のRTK解が初期化されます。
精密な測量を行う際は、受信機を初期化して再計測などを行うなどします。
観測データ
観測データのフォーマット
STATICでは観測データをログに記録します。一方RTKではインターネットなどを介して基準局から移動局に送ります。いずれも観測データですが、目的に合わせてフォーマットが異なっています。ここでは良く使用されるフォーマットについて説明します。
| 呼び名 | 主な用途 | 特徴 | 受信機間の互換性 | 形式 |
|---|---|---|---|---|
| RAWデータ | 多くのロギングはこの形式 | 受信機メーカ独自フォーマット | × | バイナリー |
| RINEX | STATICでの解析に使用 | テキストデータで人が読める | 〇 | テキスト |
| RTCM | 主にRTKの転送に使用 | コンパクトに圧縮 | 〇 | バイナリー |
RINEXとRTCMはどちらも共通フォーマットで相互に変換が可能です。RAWデータはRINEXやRTCMへの変換を行うことで異機種での利用が可能になります。
RTCMの転送
RTCMは、基準局から移動局に転送されますが、転送を担うソフトウェア同士がお互いに会話ができる必要があります。この会話方式をNtrip(エヌトリップ)と呼んでいます。NtripはRTCMの転送の標準プロトコルです。
Ntripはクライアント(移動局)・サーバー(基準局)・キャスター(中継サーバー)という3つの役割で構成されます。
基準局も移動局もNtrip Casterにアクセスするため、Drogger GPSでは設定名にNtrip Casterのアドレスといった用語が使われます。他のメーカーではCORS(Continuously Operating Reference Stations) (継続的に動作する基準局)といった呼び方が使われる場合もあります。
RTCMの転送遅延
RTKはリアルタイムですので、RTCMの転送にも速さが求められます。ただ、転送遅延があっても精密な時刻記録と衛星位置を求めることができるため補間計算ができます。
しかしながら、電離層遅延など時々刻々と変化するものは補間できません。このため、遅延時間(Ageと言います)は少なければ少ないほどよく高精度を求める場合は5秒以内が目安です。長くても10秒以下で観測しましょう。
下図ではFIXED横に黄色の文字で(26.0)とあります。これは26秒遅延しているという意味で精度劣化しています。10秒以内の場合は緑色の文字で表示されます。

まとめ
覚えておきたいことをまとめます。
- スタティックもRTKも座標は測らない。2台の受信機の相対位置を求める
- スタティックは後処理、RTKはリアルタイムに電波の波数から、相対位置を求める
- 波数が矛盾なく求まらない状態はFLOAT解、求まった状態をFIX解という
- 精度は2台の受信機の相対位置の精度で表す。1ppmは1kmで1mm。
- 2台の距離が離れると、電離層遅延と大気遅延が異なってくるため精度が劣化する。
- マルチパスが多そうな場合はミスFIXに注意する
- ミスFIXかどうかは、受信状態をリセットし再FIXさせて差異を確認する
- RAWデータとRINEX、RTCMはフォーマットが異なるが内容はほぼ同じもの
- RTCMをインターネット経由で伝送する方式をNtirpという
補足:RTKで誤解されやすいポイント
- よくRTKに使うデータを「補正データ」と言ったりしますが、実際は補正ではなく基線解析に必須な「観測データ」です。
- RTKは座標を測るものと勘違いされがちです。あくまでも基準局からの相対位置を測ります。基準局に与える座標は重要です。 それに相対位置を足すことで移動局の座標値になるからです。
- 何を測っているかを意識すると、座標が合わないといったことも明確に理由が理解できます。
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