RTK ドローンのための現場基準局が簡単に出来るようになりました。
ドローンコントローラで直接受信機に接続してRTCMを受信できます。
ドローン機種別のWiFiによるNtrip対応状況は、以下のようになっています。(当社調べ)
- DJI Mavic 3E/ 3T/3M 利用可能。
- DJI Matrice 300 RTK/ Matrice 210 RTK V2 利用可能
- Autel RoboticsのEVO II RTK 利用可能
- SONY Airpeak S1(オプションのRTKキット)利用可能
- DJI Phantom 4 RTK SDK送信機(モニターなし)利用可能。
- DJI Phantom 4 RTK モニター付き送信機 WiFiと機体への同時通信はできないため使用不可。
ここに無いドローンで対応できるかどうかは、「機体のコントローラが WiFiによるNtrip Clientをサポートしているか?」をドローンメーカーにご確認いただければと思います。
簡単にできるようになったポイントは以下の受信機 F/Wの機能追加によるものです。
- Ntrip Caster 機能の追加
- WiFi アクセスポイント機能の追加
Index
- シナリオ
- アプリとF/Wの更新
- 単独測位で仮座標のWaypointを記録する
- 基準局設定
- ロギング開始
- ドローンコントローラで接続する
- RTK移動局で接続する
- 観測データのスタティック解析
- WiFi中継器 (参考)
シナリオ
RTKドローンを使うには、基準局が必要です。基準局をどう用意するかは主に3つの方法があります。
- VRSやなどデータサービス会社と契約し、基準局データサービスにアクセスする。
- 現場の近郊に固定で設置された常設の基準局を使う。
- 現場に仮設の基準局を設ける。
1はランニング費用がかかります。またモバイル通信が出来る場所でなければなりません。
2は、近隣に使用可能な基準局が必要です。またモバイル通信が出来る場所でなければなりません。
3は、場所を選ばずどこでも使用できます。またランニング費用は不要です。
今回の記事はこの3番目の方法について説明します。
基準局の座標
基準局は事前に正確な座標が必要です。しかし、仮設の基準局ではそれが困難です。そこで、以下のようにすることで携帯電話の届かない山の中でも、あとで世界測地系の正確な座標にすることができます。
CLASモデルの場合は、FIXした座標を使うことで、後処理なしに精度6cm程度を得ることもできます。
- 単独測位で誤差 1m程度の仮座標を取得します。
- この仮座標で現場基準局を稼働させます。
- 同時に観測データをSDカードなどにロギングします。
- この基準局を使って対空標識や評定点などを別のRTK受信機で観測します。(基準局からWiFiが届く範囲に限定されます)
- この基準局を使ってRTKドローンを飛ばし写真測量やレーザー測量を行います。
--- ここまでが現場での作業で以降はあとでの処理です。--- - 電子基準点を使ってロギングした観測データにてスタティック解析を行い、基準局の正確な座標を得ます。また仮座標とのオフセットを計算します。
- 写真測量やレーザー測量で得られた座標を計算したオフセットで平行移動させます。
尚、世界測地系の必要がない場合は、 5, 6の作業は不要です。ローカル座標ですが、仮設基準局により正確な形状・距離・長さを持つ成果は得られます。
アプリとF/Wの更新
以下の内容を行うには、Drogger-GPSアプリと受信機のF/Wは以下のものに更新が必要です。
アプリバージョン
受信機のF/W
単独測位で仮座標のWaypointを記録する
以降の作業は Drogger-GPSを使って設定を行います。仮座標とのオフセット計算で問題がでないように、元期座標で記録します。
- 三脚などを使って、周囲と上空が開けた場所に基準局用の RWS/RZS受信機を設置します。ドローンを飛行させるときのコントローラはこの近くで運用します。
- [設定]-[座標系と表示]-[元期へ変換または地殻変動補正する]をONにします。
- [パラメータ管理]をタップして現在の年度がインストールされているか確認します。されていなければその年度を長押しして画面上部の[INSTALL]をタップします。
- 一つ戻って[日本のジオイドを使う]をONにします。
- 設定を抜けます。
- セッションダイアログで「フリー観測(単点観測)」を選択しすべての項目を入力します。世界測地系にする場合はアンテナ高なども正確に測ります。
- 一番したの[FIX以外をエラーとする]をOFFにします。
4.. 受信機の電源を入れ、5分程してからWaypointを記録します。CLASモデルの場合はFIXを待ってから記録を開始しても良いかと思います。
基準局設定
つぎに基準局の設定を行います。この設定はアプリと受信機が接続されたままで構いません。
- ギアマーク[設定]をタップします。
- 右上の ...メニューをタップし、[デフォルトに戻す]をタップします。
- [ネットワーク]-[Network Device]でWiFi AP(親機)を選択します。
- [WiFiパスワード]にアクセスポイントのパスワードを入力します。例として 12345678とします。(8文字以上必要)
- 1つ戻って[GNSS (衛星測位システム)]でGLONASSをONにし、BeidouをOFFにします。RZSシリーズの場合はL5/E5/B3をONにします。SBAS以下はすべてOFFにします。
- [計測・更新レート]を1Hzにします。
- [RTK]-[基準局]をONにします。
- [基準局アンテナ位置] -[Waypointから選択..]をタップし、リストから先ほど記録した仮座標の点をタップして選択します。
- 1つ戻って[基準局用キャスターホスト]をタップし[Ntrip Casterタイプ]からSelf Casterを選択します。
- [マウントポイント]にRTCM3と入力します。(任意の値も可)
- 1つ戻って[RTCMタイプ]から3.2を選択します。
- [レシーバのNtripを使う]をONにします。
ここまでできましたら、設定の最初の画面に戻ってこの内容を保存しましょう。次回以降はこの設定を復元すれば、アンテナ位置を変更するだけで済みます。
設定の保存は、
- 右上の ...メニューをタップし、[名前を付けて保存...]をタップします。
- 名前を入力 (例 B_RTK_DRONE_AP)して[OK]をタップします。
名前の先頭は、基準局はB、移動局はRなどとすると良いかと思います。
設定できましたら、設定を抜けます。FIXモードに「Time Only」と表示されます。
また、Ntrip statusは以下のようになります。
ロギング開始
正常に基準局が動き出したら、
- [Logging Control]のRAW->SD▶をタップします。
- すべての項目を入力し[OK]をタップします。
- [Stop]を押してBluetooth接続を切断します。
以降、この基準局ではDrogger-GPSアプリは使用しません。
受信機のWiFi APモードは、Bluetooth接続と同時使用ができません。Bluetoothが優先されますので必ずSTOPをタップしてBluetoothを切断します。
ドローンコントローラで接続する
WiFI接続
ドローンコントローラのWiFiで受信機のアクセスポイントに接続します。
- 受信機 アクセスポイントのSSIDは、Blueooth名と同じです。例 RWS.DC03
- パスワードは「基準局設定」の手順4で入力したもので、例では1234568です。
Ntrip Clientの設定
次にNtrip Clientの設定を行います。DJIのコントローラでは「カスタムネットワークRTK」で設定します。
項目 | 値 | 備考 |
---|---|---|
Ntrip HOST | 192.168.4.1 | 固定値 |
Port | 2101 | 固定値 |
User | a | 空で良いが許容しないコントローラでは任意の文字 |
Password | a | 空で良いが許容しないコントローラでは任意の文字 |
Mountpoint | RTCM3 | 基準局設定の手順9で入力した値 例では RTCM3 |
これでドローンコントローラの設定は終了です。 正しく設定できていれば基準局からのRTCMを受信して機体の受信機がFIXするかと思います。
あとは、写真測量やレーザー測量のフライトを行います。
ドローンコントーラーを操作する方は、基準局からあまり遠くに離れないようにします。(WiFi電波が届く範囲でコントロール)
RTK移動局で接続する
ドローンコントローラだけでなく、RWS/RZS受信機からも接続できます。対空標識や評定点の座標を高精度なRTKで取得できます。
- Drogger-GPSの[設定] > [ネットワーク] > [Network Device]でWiFi Station(子機)を選択します。
- [WiFIアクセスポイントSSID]に基準局のBluetooth名を入力します。例: RWS.DC03
- [WiFIパスワード]に基準局の設定で入力したWiFIパスワードを入力します。 例:12345678
- 一つ戻って[RTK] > [移動局]をONにします。
- [移動局キャスターホスト] > [Ntrip Caster タイプ]でRWS/RZS Self Casterを選択します。
- [マウントポイント]に準局の設定で入力したマウントポイントを入力します。例:RTCM3
- 一つ戻って[レシーバのNtripを使う]をONにします。
- 設定を抜けます。
これで、[Start]をタップすると、移動局受信機のWiFIが基準局に接続してRTKを行うことができます。
観測データのスタティック解析
フライトが終わりましたら、基準局(受信機)の電源を切ります。
SDカードに記録したデータの スタティック解析はDrogger Processorで行うことができます。
詳しくはDrogger Processor ユーザーズガイドをご覧ください。
また、高精度な基準局の構築の記事も参考になるかと思います。
WiFi中継器 (参考)
小型のUSB駆動のWiFi中継器を使うことで、コントローラや移動局の利用範囲を簡単に広げることができます。
今回、試したのはBuffaloのWMR-433W2というモデルです。45mm角で19グラムしかないのでとても手軽です。
電源は弊社のモバイルバッテリー CHE-129や、SB-A3350を使用できます。
このモデルの「ワイヤレスワンモード」というのが中継器として動作するモードで、以下のように設定します。
- 基準局用の受信機に「基準局設定」を行いアクセスポイントとして動作させます。
- WMR-433W2の電源を入れ、PCで WMR-433W2にWiFi接続します。
- ブラウザで 192.168.13.1 と入れ WMR-433W2の管理コンソールを開きます。
- 設定ウィザードでワイヤレスワンモードを選択し、接続先の検索をし一覧から、基準局のアクセスポイントを選択します。
- [暗号化方式]からWPA2を選択し、[キー入力方式]で文字入力を選択します。
- [事前共有キー]に基準局APのパスワードを入力します。 例: 12345678
これで、中継機の設定は終わりです。中継機は電源ONで自動的に基準局APに接続した状態になります。
移動局は、このWMR-433W2のデフォルトのSSIDとパスワードを使うように設定します。
この中継機を基準局と移動局の両方から見えるところに設置することで、建物などの障害物の反対側でもRTKを行うことができます。
障害物がなければ、それぞれ50m以上は通信可能です。
Enjoy with Drogger
Droggerの詳細・ご購入は https://www.bizstation.jp/ja/drogger/