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ドロガーで壁を越えよう

RTK基準局とRTCM

RTK測位をするには基準局が必要です。基準局を構築しさまざまな受信機で利用するにはデータをフォーマット形式であるRTCMの理解が欠かせません。ここではRTK基準局を構築するにあたって必要な内容を説明します。

用語の説明

用語 内容
RTCM 衛星測位に関する通信用データフォーマットの総称。主に、基準局受信機にて各衛星までの距離を観測したデータを移動局に送信する際に使用される。
RTCMはビット単位でフォーマットされ通信用にコンパクトに圧縮されている。
RTCMには細分化されたメッセージタイプがあり、タイプごとに目的・用途とフォーマットが異なっている。
RTCMのバージョンが上がるごとにメッセージタイプが追加されるが、既にあるタイプが変更されることはない。
語源はRadio Technical Commission for Marine Service(海事用無線技術委員会)
MSM MSMはMultiple Signal Messagesの略で1つのRTCMメッセージに複数の信号(例 L1 L2 L5)を含めることができるフォーマット。MSMは1~7まであるが4, 5,7のいずれかが一般的に使用される。数値が上がるほど1つのシグナルに対する情報量が増える
観測データ ある時刻における受信機から衛星までの距離を測ったデータ。
観測データの転送にはRTCMが使用される。RTCM以外にもRINEX、BINEX、RAWデータなど観測データのフォーマットがあるがどれも内容はほぼ同じもの
衛星航法データ 現在の衛星の位置を計算するためのデータ
各衛星から放送されるもので、受信機や観測点固有のものではない。
RTCMにもこのデータのためのメッセージタイプが定義されるが受信機は自分で衛星から受信できるので通常は必要としない。

RTCMバージョンの違い

RTCMはバージョンが上がるごとにサポートされるメッセージタイプが増えています。ここでは違いの概要だけ記します。

バージョン 内容
3.0
3.1
RTCM 3.0/3.1はGPSとGlonassのみサポートしている。3.0と3.1では衛星航法データ用のメッセージなどが追加されているが、実用する観測データのタイプは3.0と3.1は同じ。
3.2 MSMタイプのメッセージが追加された。BeidouやQZSSもサポートされ現在使われる衛星をすべて利用できる。
3.3 3.3はGalileoやBeidouの衛星航法データのフォーマットなどが追加されているが、一般的には航法データを流すことはあまりないため、移動局での利用では特に3.2と変わりがない。

RTCM 3.3対応の受信機の場合であっても実際の設定ではRTCM3.2までのメッセージタイプのみ使用している場合もあります。異機種の互換性を確認するにはRTCMの対応バージョンではなくRTCMのメッセージタイプがサポートされているかを確認することが重要です。

RTCMメッセージタイプ

メッセージには大きく分けて4つの種類があります。

  • 観測データ
  • 衛星航法データ
  • 基準局位置データ
  • アンテナや受信機などとその他の情報データ

よく使用されるメッセージタイプ番号を表にします。また、バージョンいくつから定義されているかも示します。かっこ内は分かり易いように衛星システムを記します。尚、衛星航法データは一般的には送受信しませんのでここでは省きます。

用途 RTCM3.0より RTCM3.2より
観測データ 1004 (GPS), 1012 (GLO) 107x (GPS), 108X(GLO), 109x(GAL), 111x (QZSS), 112x (BDS)
基準局位置データ 1005, 1006
情報データ 1008, 1033 1230 (GLO)

107x のようにxの部分はMSMのバージョン値になります。MSM5であれば1075がGPSのメッセージタイプです。

複数の衛星をまとめる

例えばGPSでも複数の衛星がありますが、一つの観測データのメッセージの中に複数の衛星をまとめています。

メッセージ送信パターン

観測データは1秒に1回の送信が標準です。基準局位置データは変化しないデータですので、毎秒は必要なく5秒や10秒に1回といった間隔で送信されます。

GPS, GLO, GAL, QZSS, BDSの5種の衛星の送信は以下のようになります。

これを毎秒繰り返し送信します。また、5秒や10秒に一回基準局位置データが追加されます。

Drogger基準局が生成するメッセージタイプ

RWSシリーズ、RZSシリーズはメッセージタイプの組みわせを選択できます。以下に選択肢ごとのタイプを示します。かっこ内は出力のON・OFFを選択可能なメッセージです。RTCMの生成には、GNSSモジュールが行うものと、ビズステーション製のF/W(ファームウェア)が行うものの2通りがあります。

アプリ選択肢 RZSシリーズ RWSシリーズ
3.3 - 1005, (1008,) 1074, 1084, 1094, 1124, 1230, *1
GNSSモジュールが生成するRTCM
3.2 1005, (1008,) 1075, 1085, 1095, 1115, 1125, 1230, *2 注記以外左に同じ
F/Wが生成するRTCM
3.1 1005, (1008,) 1004, 1012 左に同じ

RWSシリーズはGNSSモジュールが生成するものと、BizStationのF/Wが生成するものがあります。BizStationのF/Wが生成するものは、後述する互換性に関する問題に対応したものとなっています。

RZSシリーズのRTCMはすべてGNSSモジュールが生成するRTCMです。

互換性に関する既知の問題

互換性に関する既知の問題は以下のものがあります。

  • 秒以下のオフセット
  • Trimble受信機ではメッセージタイプ 1008が必須
  • RTCM 3.2に非対応

それぞれ順に説明します。

秒以下のオフセット

観測データの時刻に .001や.999といった小数点が含まれる場合があるというもので、u-blox社のGNSSチップが生成するRTCM固有の問題です。

多くの受信機では観測の時刻に秒以下のオフセットがあっても問題なく処理できます。そもそも、基準局で生成したRTCMが移動局に届くまでにランダムな時間差があります。しかし、現状わかっているものとして以下のメーカー製の受信機はこのオフセットをうまく処理できません。

  • TOPCPN
  • CHCNAV (NX510)

この問題の対策は、基準局側で秒以下のオフセットが無いRTCMを生成することです。Drogger 基準局においてどのように対応すれば良いかを示します。

基準局に使う受信機 対策
RWSシリーズ F/W 4.1.0以降に更新し、RTCM 3.2を出力するよう設定します
RZSシリーズ この問題は発生しません

Trimble受信機ではメッセージタイプ 1008が必須

Trimble受信機の移動局を使用する場合は、メッセージタイプ 1008が必須です。

Drogger 基準局では1008の出力を有効にすることができます。Trimble受信機で利用することが想定される場合は有効にしてください。

RTCM 3.2に非対応

やや古い受信機では、GPSとGlonassのみ利用可能な受信機があります。これらの多くは、RTCM 3.0/3.1のメッセージタイプのみサポートし、RTCM 3.2は理解できません。(正確には移動局の受信機がサポートするRTCMメッセージタイプをメーカーに確認してください。)

この問題の対策は、基準局側でRTCM 3.0/3.1に含まれるメッセージタイプの観測データを出力することです。Drogger 基準局においてどのように対応すれば良いかを示します。

基準局に使う受信機 対策
RWSシリーズ F/W 4.1.0以降に更新し、RTCM 3.1を出力するよう設定します
RZSシリーズ RTCM 3.1を出力するよう設定します

RWSシリーズ

RZSシリーズ

*1:Advanced Opriotnsにて、MSM7を選択可能

*2:Advanced Opriotnsにて、MSM7を選択可能