RWS.DCMは標準でMoving Baseをサポートする2アンテナのRTK受信機です。加えてみちびきCLASによるPPP-RTKとSDカードへのロギングをサポートします。
RWS.DCMとRWS.DCの機能の違いは、Moving Base機能が追加されていることのみです。 このガイドでは、RWS.DCMのMoving Base機能を解説します。
概要
Moving Baseは2つのアンテナ間の相対位置をリアルタイムにセンチメートル級の精度で測定します。それにより、静止状態で2つのアンテナの向き(絶対方位)や傾きを知ることができます。精度は2つのアンテナの距離が長くなるほど高精度になります。
Moving Baseは静止状態でも高精度方位を得られることが最大の特徴で、方位を得る他の方法の欠点を解消できます。例えば、磁気センサーのように周囲の磁気環境の影響を受けたり、ジャイロセンサーなどのように移動しないと初期化できないなどといったことがありません。センサーの初期化のしずらいドローンや重機などのヘッデイングと位置測位を強力にサポートします。
CLASは衛星のみの情報でPPP-RTKによる高精度な測位が可能です。ただ、対応衛星数が少なく上空環境の影響を受けやすい欠点があります。しかしドローンや野外の重機などでは良い上空視界が得られやすく欠点を補えます。さらに補正情報などを受ける無線システムを不要にでき、大幅にシステムを簡素化することができます。
CLASから得られる座標は今期座標で、地図などの元期座標とは異なっています。RWS.DCMではSDカードに地殻変動補正パラメータファイルをインストールすることでリアルタイムに元期座標を得ることが可能になっています。
また、外部デバイスを使用することなく内蔵SDカードに直接NMEAまたはRAWデータを記録できます。ドローンや重機の運行記録なども容易に取得可能です。
デフォルト設定
RWS.DCMはデフォルト(電源を入れるのみ)でMoving BaseとCLASが有効です。Drogger-GPSを使用しないソリューションでもほとんど設定が不要です。
計測・更新レート
測位方法 (Moving Base・RTK・単独測位)と、選択衛星との組み合わせで最高レートが異なっています。RWS.DCMは1アンテナでの利用も可能で、Moving Baseでは使用できないレートも設定可能になっています。
それぞれで利用可能な更新レートは以下のとおりです。Drogger-GPS 設定の[計測・更新レート]にて設定を行ってください。
GPS+GLO+GAL+BDS | GPS+GLO+GAL | GPS+GAL | GPS+GLO | GPS+BDS | GPS | |
---|---|---|---|---|---|---|
RTK | 7 Hz | 10 Hz | 13 Hz | 13 Hz | 13 Hz | 20 Hz |
単独測位 | 9 Hz | 12 Hz | 20 Hz | 20 Hz | 16 Hz | 25 Hz |
MB | 5 Hz | 8 Hz | 10 Hz | 10 Hz | 7 Hz | 10 Hz |
アンテナ配置
RWS.DCMには2のアンテナコネクタがありますがそれぞれの役割は下図のようになります。測位結果の位置はMBベースアンテナ位置です。MBローバーアンテナは方位とロールまたはピッチのためののみに使用されます。
2つのアンテナを同じ移動体に固定しますが、アンテナの配置は以下の2つがあります。
RWS.DCMのデフォルトは、右方向になっています。変更する場合は、Drogger-GPS設定 - [MB (Moving base)]-[ベースから見たアンテナ配置]で変更します。
動作の確認
Moving Baseの動作状態は、メイン画面で以下のように確認できます。
Fixモードに表示されるワードの意味は以下の通りです。
表示ワード | 意味 |
---|---|
MB | Moving Baseモードです |
POS | 位置情報が有効です |
HEAD | 方位情報が有効です |
FIX | RTK FIX解です |
FLOAT | RTK FLOAT解です |
NMEAの出力
Moving Baseの画面で表示されている内容はNMEA $PDGRPで出力されます。Drogger-GPSの[メッセージ出力]で行えます。
$PDGRP, Delta North, Delta East, Delta Down, Distance, Heading, HeadingAccuracy, fixMode, StationID<*Checksum>
FixModeの詳細
FixModeはビットフラグになっていてビットごとの意味になります。
画面表示 | 値 | 意味 |
---|---|---|
POS | 4 | 位置情報が有効です |
FLOAT | 8 | RTK FLOAT解です |
FIX | 16 | RTK FIX解です |
MB | 32 | Moving Baseモードです |
HEAD | 256 | 方位情報が有効です |
NORMALIZED | 512 | 相対位置(E N D)は距離を1mとした正規化された値です |
- 2つのアンテナの向きはHeading値で読み取ることができます。
- 時刻はGGAと同じ時刻になります。同時にGGAを出力することで時刻を得ることができます。
- .DCMのMovingBaseではアンテナ間距離を常に100cmとして正規化(NORMALIZED)されて出力されます。(この制限はGNSSモジュールの制限のため解除できません)
- Delta North, Delta East, Delta Downはアンテナ間距離を100cmとした場合の距離(cm)です。
staionIDの詳細
$PDGRPの出力はMovingBaseのものと、RTKの基準局-移動局の相対位置の2種類があります。MovingBaseのものはstaionIDが-1で出力されます。
ヒント
出力するインターフェースにおいてメッセージ量が多すぎる場合、メッセージの欠落が発生する場合があります。計測・更新レートと選択メッセージを適切にする必要があります。
RWS.DCMの制限事項
- MB Roverを追加し2つのRoverによる3軸構成はサポートされていません。
- MB Baseの生成するRTCMの外部出力はサポートされていません。
- 2つのアンテナ配置で自由移動はサポートされません。
- 出力するインターフェースにおいて秒間メッセージ量が多すぎる場合、メッセージの欠落が発生する場合があります。