RWXやRWPとDrogger Processorを使って公共測量 作業規定の準則 RTK法・ネットワーク型RTK法で3・4級の基準点測量が行えます。
ここでは実際の観測方法とDrogger Processorを使って網平均計算を行うまでの一連の方法を説明します。
尚、基準点測量には一定のルールが定められています。このガイドは作業規定の準則等を事前に学習されていることを前提にしています。
概要
RTK法・ネットワーク型RTK法では、それぞれ以下の3つの方法があります。
- 直接法
- 間接法2台同時
- 間接法1台準同時 (ネットワークRTK法のみ (作業規定の準則ではRTK法にはこの方法は明記されていない))
これらのうち、間接法2台同時は現在のところサポートしておりません。直接法と間接法1台準同時法が計算可能です。
直接法
直接法では新点と既知点を含む多角形を構成するため、基準局は2か所以上でセッションも2つ以上です。
間接法1台準同時
この方法は、1つの基準局と1台の移動局受信機で行うことができます。一つの路線を往復で計測し点検を行います。
それぞれの方式の観測計画は専門書をご覧ください。
それでは、実際の例を挙げて順に進めてみます。 例として以下のように既知点 1 と4、 新点 2 と3で実際にRTK間接法1台準同時法で観測したデータをもとに説明します。(尚、公共測量などの場合は、RTK間接法1台準同時はNGかと思われますので、ネットワーク型RTK法で行ってください。作業方法などは全く同じです。)
既知点 1 と4は街区基準点です。点間距離の距離規定を逸脱していますがサンプルですのでご容赦ください。
まず最初にDroggr-GPSを使ってWaypointログをとり、その後Drogger Processorを使って新点の位置を網平均にて求めます。
機材など
三脚でも良いのですが、場所を取るのと移動が大変ですのでRWXとポールで行いました。
- Drogger RWX
- Google pixel3 (SIM入り)
- Drrogger-GPSアプリ
- RTKポール (気泡管付き ポール高 1.8mに設定)
- RTKハイポット(2脚 伸び縮みする足)
- スマホホルダー (Bike用)
- RTKの基準局 (弊社の社屋に設置した基準局)
アンテナ高は、RWXの底から位相中心0.1996mとポール高1.8mで計2.0mです。
- AndroidとPC間のデータ転送はこの例ではGoogle Driveを使用します。あらかじめPCでGoogleドライブにアクセス可能にしておきます。
受信機設定
Drogger-GPSでの設定です。デフォルト状態からの変更点のみ列記します。
- [GNSS (衛星測位システム)] - [GLNASS] ON、[Beidou] OFF
- [計測・更新レート] 1Hz
- [ヘッデイングと傾斜補正]-[パッケージ] RWX、[傾斜補正] ON、[アンテナ取付高さ] 2.0m
- [RTK]-[移動局] ON、[移動局用キャスターホスト]-[Ntrip Casterタイプ] Drogger Ntrip Caster、[マウントポイント] JP_BIZSTATION
- [表示座標系]-[元期へ変換...] ON、[パラメータファイル管理]にて2022年度をインストール、[表示座標系] 8系、[日本のジオイドを使う]ON、[Waypointログ記録後のダイアログを表示しない]ON
傾斜補正はポールのわずかな傾斜分も補正して精度を上げるために有効にしています。
準備
センサーキャリブレーション
まず、RWXのセンサーキャリブレーションを行います。RWXの電源を入れ8の字に数回転させます。
センサーキャリブレーションができたらそのままポールに取り付けます。
デジタル水平器キャリブレーション
- Drogger-GPSにてRWXに接続します。
- DMP方位計が北0°になるようポールを回転させます。
- ポールの気泡管を使ってポールを垂直にします。
- デジタル水平器を長押しして、リセットします。画面の気泡がグリーンになっているのを確認します。
- グリーンから外れる場合は、再度リセットします。
マップ
マップを[Open street map]に切り替えておきます。
RTK観測
RTK間接法1台準同時法ですので、点1 ~ 4を往復で計8点観測します。
点の観測
- ポールを方位計を見ながら真北にむけ、デジタル水平器を使って垂直にします。
- マップのバルーンマークをタップし、点名・点番号を入力し、計測時間を60にし[OK]をタップします。
- 観測が終了するまで待ちます。
2点目以降は、点名・点番号の数値が自動インクリメントされます。
観測終了処理
往観測が終了しましたら、往観測同様に記録したファイルの別名(341-A)にします。
- フォルダーアイコンをタップして、記録したWaypointファイルを開きます。
- [File information]をタップします。
- [セッション名]で自動で入っている数値の後ろに A を付加します。例 341-A
- [観測方法]で「ネットワーク型RTK法」を選択します。
- [OK]をタップします。
これで、往観測のファイルが341-A_wpt.gpxに変わります。復観測は別のファイルに記録されるようになります。
往観測結果をマップに表示
次に、往観測で得た位置をマップに表示します。復観測の際にズレ量をリアルタイムで確認できます。
- マップのバルーンアイコンを長押しします。
- [ウェイポイントのロード...]をタップし、往観測のファイル341-A_wpt.gpxをタップします。
- マップの+アイコンをタップし、上のスケールが 0.1m以下になるように拡大します。
受信機のリセット
復観測は点検のための観測ですので、一度受信機をリセットします。
- メイン画面の[...メニュー]-[レシーバ]-[GNSSホットリスタート]をタップします。
- 再度FIXし安定するまで待ちます。
- 復観測を開始します。
復観測が終了したら、往観測と同様にファイルを別名にします。
観測のコツ
観測時間
観測時間を60秒など長めにします。間接法1台準同時法は点間ベクトルの重複ベクトル較差の上限が水平 2cm 垂直 3cmです。しかし、1点当たりの精度が1cm+αCEPで2点の一時的な偏りが合計されると基準外になってしまいます。観測時間を長くし平均化することで、早い動きのノイズを低減して精度を向上させます。
ポールの垂直と曲がりなど
ポールの垂直が極めて重要です。アンテナ高 2mの場合0.1°で3mmの誤差になります。2点ありますので偏りがあると6mmにもなります。
各点の観測時に必ず方位計で北 0°に向けて行うようにします。
また、ポールの長さや取付を8点すべて計測するまで変更しないようにします。
点名と点番号
点名と点番号の数値は自動インクリメントされますので若い点番号から行うと入力の手間を省けます。
複観測は、逆に 4 3 2 1の順ですが、Waypointダイアログ 点名横の検索ボタンを押すことで、既に観測した点の点名と点番号を自動入力できます。
設置後の待ち時間
オープンスカイは問題ありませんが、近くに住宅や建物などがある場合は移動して設置したあと、数分待ってからログの記録を開始します。こうすることでマルチパスなどによる一時的な誤差を除去し影響を低減できます。
観測結果ヘッダーの編集とPCへのデータ転送
往復の観測が終わりましたら、2つのファイルのヘッダー情報を編集します。
- フォルダーアイコンをタップして、記録したWaypointファイルを開きます。
- [File information]をタップします。
- 下表の例に従いヘッダー情報を編集し[OK]をタップします。
タイトル | 内容例 |
---|---|
観測方法 | ネットワーク型RTKまたはRTK |
受信機名 | RWX |
受信機番号 | 5623 |
アンテナ番号 | C21080100881 |
基準局 点番号 | 301 (往復とも同じのこと) |
基準局 点名 | S300 (往復とも同じのこと) |
基準局 受信名 | DG-PRO1RWS |
基準局 アンテナ番号 | |
基準局 アンテナ高 | 0 |
基準局 データ取得間隔 | 1 |
基準局 最低仰角 | 15 |
編集できましたら、観測手簿・記簿を表示して内容を確認します。この操作により追加の情報が計算されます。Drogger Processorでデータを使うために必須の操作です。
- [...メニュー]-[表示]-[測量手簿]または[測量記簿]をタップします。
- 表示するアプリを確認されたら[Chrome] [常時]をタップします。
- ピンチ操作で拡大・縮小ができます。
確認できましたら、ファイルをGoogle Driveに保存します。
- [Data list]の画面に戻ります。
- 往観測のWaypointログファイルを長押ししてチェックと付けます。
- 復観測のファイルをタップしてチェックを付けます。
- 共有アイコンをタップし[ドライブ]を選択して[保存]をタップします。
これで、RWXとDrogger-GPSを使った観測は終了です。
Drogger Processorでの処理
ここからはPC上のDrogger Processorでの処理です。
プロジェクトの作成
- Drogger Processorを起動します。
- [ファイル]-[新規プロジェクト]をクリックします。
- プロジェクト名を入力し、[OK]をクリックします。
- [ファイル]-[プロジェクトオプション..]をクリックします。
- [平面直角座標] -[座標系]を観測場所に合わせて指定します。
- そのほかのタブで必要な事項を入力し[OK]をクリックします。(入力は必須ではありません)
Waypointファイルのインポート
- エクスプローラでGoogle Driveを開き保存したWaypointファイルを見つけます。
- 往観測のデータをDrogger ProcessorのWayPoint表示領域にドラッグ&ドロップします。
新しいセッション作成のダイアログが開きます。 - [データ種別]から[RTK間接法 1台準同時]を選択し、[往観測]のチェックを付けて[OK]をクリックします。
- 続けて復観測のデータも同様に処理します。唯一、[往観測]のチェックはOFFにしてインポートします。
正しく処理ができると下図のようになります。
既知点と座標入力
今回の例は単路線で両端の点1と4は既知点です。既知点の指定と座標の入力を行います。
- [セッション]から往観測を選択します。①
- [点と観測データ]から番号1を右クリックします。②
- [固定点]をクリックします。③
- もう一度番号1を右クリックし、[座標]をクリックします。
- 成果表などを見ながら座標を入力します。[値のタイプ]を変更することで、緯度経度(Degree or DMS)や平面直角座標などで入力できます。[楕円体高]と[標高]はいずれか一方のみ入力します。
同様に点4も固定点の指定と座標入力を行います。尚、網平均計算は往観測を使用することになっているため、復観測データにはこの処理は不要です。
結果出力
ここまでですべての入力は終了です。あとは確認や印刷といった作業のみです。
観測手簿・記簿
Drogger Processorからも観測手簿・記簿が確認できます。
- [セッション]から表示する観測を右クリックします。
- [RTK観測手簿]または[RTK観測記簿]をクリックします。ブラウザが起動し手簿または記簿が表示されます。
点間ベクトル
間接法では点間のベクトルを計算し網平均のベクトルとして使用します。点間ベクトルは自動で計算されます。
右ペインの[点間ベクトル]タブに表示されます。印刷は表示領域を右クリックし[印刷]をクリックします。
点検
間接法では往復での点間ベクトルの較差を確認します。
- [セッション]から往観測と復観測の両方にチェックを付けます。
- 右ペインの[点検]タブをクリックします。
今回の例では4つの重複基線ベクトル較差が計算されます。それぞれを順にクリックしΔE N Uが許容範囲内にあるか確認します。
点検の印刷
- 点検結果一覧の領域を右クリックし[印刷]をクリックします。尚、不要な点検行がある場合、削除してから印刷を行ってください。
網平均計算
RTKの場合、網平均計算の重量は固定値を使用します。
- [セッション]から往観測のみチェックを付けます。
- 右ペインの[網平均]タブをクリックします。
- [高度な設定を変更する]にチェックと付けます。
- [網平均の重量]で固定値を選択します。
そのほかの設定値を参考までに記します。
- セミ・ダイナミック補正:ON
- ジオイド補正:ON
- そのほかはすべてOFF
これで、既に網平均計算は完了しています。この例ではT2とT3の成果表が得られます。
これでRTK法 間接法1台準同時 測量ができました。
例はRTK法でしたが、ネットワーク型RTK法 間接法1台準同時も同様です。
直接法
直接法で今回の例を行う方法を記します。
直接法では、2つの基準局または仮想点を使って4点を計8観測を行います。セッションは基準局ごとで2つのセッションになります。図にすると下図のようになります。
点1と4は既知点で新点2と3の座標を求める例です。
点検は、例えば、 基準局1 - 点1 - 基準局2 -点2 - 基準局1のような環閉合で行います。複数の環閉合差を確認します。
直接法の場合、基準局の点番号と点名は必須です。Drogger-GPSのWayPoint FileInfomationで以下のようにしていしてください。
セッションA: 番号 1000 名前 BASE1000
セッションB: 番号 1001 名前 BASE1001
網平均は、基準局1、 基準局2も新点として計算を行います。また、2つのセッションを両方選択し8つのベクトルすべてを使って行います。