誤差数センチで位置がわかる高精度なGPSがずいぶん安価に使える時代になりました。
そうは言っても魔法の道具ではありませんので、しくみを知って上手に使いましょう。
「高精度 GNSSを学ぼう」では数回に分けて、高精度 GNSSを使うにあたり、そのしくみと知っておくと便利なことを書いていきたいと思います。
GNSSって何?
冒頭で「高精度なGPS」と書きましたが、「GPS」はアメリカの測位衛星の固有名詞です。他の国でも測位衛星を運用しています。それぞれ名前が異なりますので、一般名として測位衛星システムをGNSSと呼びます。
国 | 名前 | 略称 |
---|---|---|
アメリカ | GPS | GPS |
ロシア | GLONASS | GLO |
EU | Galileo | GAL |
中国 | Beidou | BDS |
日本 | みちびき | QZSS |
インド | NaviC | IRN |
このあとの説明では、主にGPSの特性をもとに記載していきます。他の衛星の場合異なることもあります。
どうして位置がわかるの?
よくある勘違いは、衛星の電波を受信すればそこに「あなたの位置はここですよ」と書かれているといったものです。そうではありませんので順番に説明していきます。
衛星からは地上に向けて電波が発射されています。受信機はその電波を受信して衛星から自分までの距離を測ります。
3つの衛星の正確な位置が分かっていて、各衛星までの距離を測ったとします。 自分の位置は各衛星を中心とし距離を半径とした3つの球の交わった点になります。
位置は緯度、経度、高度の3次元です。3個の衛星位置とそこまでの距離で、連立方程式をたてて緯度、経度、高度の3つの解を求めます。
どうやって距離を測るの?
衛星から発射された電波には時刻情報が載せられています。受信したときにその時刻を見て、届くまでの時間を計測します。電波の速度は光速と同じで秒速 約30万kmです。距離は以下のように計算できます。
距離 = 30000000m x 到達時間
陸上の100m走のタイムを計る場合ですと、スタートとゴールは同じストップウォッチで測ります。 しかし、衛星と地上では同じストップウォッチを使うことができません。そのため、あらかじめ衛星と受信機の時計を正確に合わせておく必要があります。
衛星には精密な原子時計が搭載されています。受信機はこの原子時計と時刻を合わせて使用します。
余談ですが、GNSS受信機は測位できているとき、原子時計と同期しているので極めて正確な時計でもあります。
時計の合わせ方
先ほど3つの衛星で位置を求めましたが、時計のズレも未知数として1つ多い4つの衛星を使って位置と共に連立方程式を解いて求めます。 測位には3次元の位置と時刻の4つの未知数があるため4つ以上の衛星の受信が必須です。
コード測位
衛星から発射された電波には時刻情報が載せられていると説明しましたが、この情報のことを測位コード信号と言います。この情報はデジタル信号で約 1MHzの1か0のビット信号です。受信機はこの測位用信号を使って時間を測ります。光速を1Mhzで割ると1ビットあたりの距離になりますが、おおよそ300mです。かなり長い距離です。 ビットとビットの間は受信機でより詳細に計測します。1000分割できれば30cm単位で測れることになります。
衛星の位置
衛星の位置が事前にわかっていないとならないことは先に書きました。ではどうやって衛星の位置を得るかですが、衛星は位置を計算するためのデータを自分自身で放送しています。この情報を衛星航法データと呼びます。この情報もデジタルデータです。
受信機はこの衛星航法データと現在の時刻からその時の衛星の位置を計算します。
衛星航法データの受信
衛星航法データの受信には時間がかかります。これは、衛星の高度が2万~ 3.6万Kmととても遠い距離で高速に伝送できないためです。地上に届く電波はとても弱く、例えると1km先のWiFiより弱い電波です。
このため正しく読み取るには受信状態の良いところで30秒かかります。また、このデータは約2時間ごとにより新しいデータになります。一度受信できれば2時間は有効です。
衛星航法データのあれこれ
GNSS受信機を扱うときに衛星航法データにまつわる特徴がいくつかあります。
コールドスタート
GNSS受信機が電源を入れてすぐに位置を得られないのは、衛星航法データを受信するのに30秒かかるためです。 この衛星航法データの無い状態からの測位開始をコールドスタートと呼びます。コールドスタートから測位出来るまでには概ね30~ 60秒かかります。
ウォームスタート
衛星航法データは2時間ほど使えますが、受信機の電源を切る前にこれを保存しておけば、再度電源をONにした際に30秒待たなくともすぐに測位できます。これをウォームスタートと呼びます。
ビズステーションで販売しているGNSS受信機は、2時間以上持つバックアップ電池を内蔵していて、ウォームスタートが可能になっています。
インターネットから衛星航法データを得る
衛星航法データは衛星から受信しますが、同じ内容をインターネットから得ることもできます。インターネットから受信して受信機に送ってあげることでほぼウォームスタートと同じようにすぐに測位開始させることができます。 Drogger-GPSではA-GNSSという機能でこれが行えます。
室内での測位
よく、室内で測位できますか?と聞かれることがあります。答えは概ねNOなのですが、室内で衛星を使って測位できることがあります。これは室内でも、減衰して微弱になっていますがかすかに受信できるためです。
ただし、コールドスタートはほぼできません。衛星航法データは意味のあるデジタル情報で、ある程度の受信レベルが必須です。かすかな電波では正しい情報として取り出せないためです。それにくらべて単純なコード信号は低い受信レベルでもなんとかなります。ただ、精度は出ません。
測位できている状態で、外から持ってきた受信機は室内でも測位できますが、室内でコールドスタートした場合はダメということになります。(室内でコード信号がかすかにでも受信できるのが前提です)
今回はざっとGNSS測位の概要を説明しました。この説明だけですととても正確に位置が測れそうですが、実際はさまざな精度を悪くする障害があります。次回はこの位置精度について書きたいと思います。
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