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ドロガーで壁を越えよう

Drogger-GPS セミ・ダイナミック補正

Drogger-GPS Ver 2.7.161でリアルタイムにセミ・ダイナミック補正ができるようになりました。

この内容は、主に測量など正確な絶対座標値を必要とする方のためのものです。

相対的な位置で問題ない用途の場合は利用する必要はありません。知識としてご覧いただければと思います。

セミ・ダイナミック補正とは

感覚的に地面は動かないものですが、実際には日々少しづつ動いていて、変動の多い日本では年間数センチ以上も動いています。そのため過去の地図はいま調べるとズレてしまっていることになります。

地盤の変動を日々地図に反映したりできませんので、地域ごとに基準日からの変動量を事前に調べておいて、相互に変換するのがセミ・ダイナミック補正です。事前に調べておいた変動量のリストをパラメータファイル*1といいます。

基準日は 「測地成果2011の基準日」でこれを元期といい、現在の測定日を今期といいます。

セミ・ダイナミック補正の計算の方法とパラメータファイルは、国土地理院によって提供されています。パラメータファイルは毎年4月1日に更新され一年間は基本的に同じものを使用します。

測量成果は元期座標です。また既存の地図も元期またはそれに近い期のものです。GNSSで得た測位結果をこれらと比較する際には、元期・今期を揃えて行う必要があります。

補正量の一例ですが、2021年のパラメータファイルで本州で最も補正量が大きいのは、気仙沼と北上の間あたりで1.48mほどあります。単独測位でも無視できない程の量です。

今期の数

元期は1つの基準日ですが、今期は毎日のことなので一意ではなくたくさんあります。しかし、パラメータファイルは年度ごとですので今期は1年単位と考えることができます。

今期の2つの座標を比較する際には、同じ年度の今期の必要があります。元期の場合はそのような配慮は不要です。

GNSS測位結果の今期と元期

新点の位置を求める際に、既知点を基準にしそれが元期であればそこからの相対的な位置ですので、概ね元期での座標が求まります。しかし、GNSSの場合、測位結果そのものが今期のことがあるので既知点と比較したりする場合には揃えないと計算ができません。

GNSSの測位結果の今期・元期は以下のとおりです。

内容 測位結果 備考
単独測位 今期
PPP (MADOCAなど) 今期
RTK VRSC (CLAS) 今期
RTK 基準局のアンテナ位置座標が今期 今期
RTK 基準局のアンテナ位置座標が元期 元期 基準局位置での元期
RTK データサービス会社 元期 「移動局位置での元期」が計算されるものと、「基準局位置での元期」の場合の2種類があります。
ほとんどの場合「移動局位置での元期」が計算されます。
PPK 電子基準点によるSTATIC (日々の座標値F5) 今期 日々の座標値は今期です
  • PPKはPost processing kinematic で後処理による搬送波測位の略です。キネマティックは動的ですが、ここでは静的も含んで使用しています。
  • RTKの元期には、「移動局」位置と「基準局」位置の2種類があります。それぞれの位置で補正量が異なるためです。移動局の位置で求める方がより正確です。

RTK・PPK基準局座標

RTK・PPKは基準局からの相対位置を求める処理ですので、元期/今期は基準局のアンテナ位置がどちらで指定されていたかに依存します。

データサービス会社の場合、調べた限りではPPPを除きすべて元期(移動局位置) のようです。(Softbankでは元期(基準局位置) も選択できます)

そのほかの基準局の場合は、元期(移動局位置) / 元期(基準局位置) / 今期のいずれかであるかが重要ですので、確認いただければと思います。

設定

基準局座標の種類を指定する

セミ・ダイナミック補正ができるようになったことで、RTK移動局として使用する際に、基準局アンテナ座標の種類指定が必要です。

  1. [設定]-[RTK]-[移動局用キャスターホスト]-[Ntrip Casterタイプ]をタップします。

    ここで[VRSC]または[データサービス会社]を選択すると、次の[基準局座標世代]が自動的に決定され選択不要になります。
  2. 使用するCasterの種類を選択します。
  3. [基準局の座標と機能]を選択します。

今期としてマークし、このあと説明するセミ・ダイナミック補正を有効にすることで、測位結果をその位置に基づいてリアルタイムに元期に変換することができます。

また、「元期」を選択した場合は、「基準局」位置と「移動局」位置のの補正量をそれぞれ求め差分のみ補正し、移動局位置での元期に変換します。

Ntrip Casterに関するそのほかの項目は従来通り指定してください。

パラメータファイルの新規インストール

セミ・ダイナミック補正を行うには期ごとのパラメータファイルが必要です。

パラメータファイルは「測量成果」です。セミ・ダイナミック補正によって得られた値を「測量」に使用する場合は、測量法第30条により「国土地理院の長の承認を得る」手続きが必要です。杭打ちや標識探しといった測量でない用途の場合手続きは不要とのことです。

  1. [設定]-[表示座標系]-[元期へ変換または地殻変動量を補正する]をONにします。
    「測量法に基づく確認」が表示されますので[同意する]をタップします。同意しない場合はOFFになります。
  2. [パラメータファイル管理]をタップします。
  3. 2019年から現在の年度までのリストが表示されます。

  4. 必要な年度を長押ししてチェックと付けます。(複数年度まとめてチェックできます)
  5. アクションバーの[Install]をタップします。
    インストールが開始されます。

  6. 完了すると、各行が「Installed」と表示されます。

新しい年度やアップデートされたパラメータファイルをインストールする

パラメータファイルは一年間同じ予定ではありますが、必要に応じて新しいバージョンがリリースされます。また、年度ごとに新しいパラメータファイルがリリースされます。

新しいパラメータファイルのzip名を調べる

  1. 以下のサイトにアクセスしてリストから新しいパラメータファイルのリンクを探します。
    プレート運動による地殻変動の補正(定常) | 国土地理院

  2. リンクにカーソルを合わせると画面下部にURLが表示されます。common/の後ろのzipファイル名(2023年は 000248852 )をメモします。同時に右横のバージョンもメモします。(例 1.0.0)


  3. [パラメータファイル管理]を開き、アクションバーの+をタップします。自動的に[year]に新年度の値が入ります。


  4. 先ほどメモしたバージョンとファイル名(.zipを除く 例:000231038)を入力します。
  5. [OK]をタップします。
  6. 追加した行を長押ししてチェックを付けます。
  7. アクションバーの[Install]をタップします。
    インストールが開始されます。
  8. 完了すると、その行に「Installed」と表示されます。

尚、年度の途中でアップデートされたパラメータファイルの場合は、既にある行をタップして、[version]と[Filename]を入力します。

設定の保存

上記で行っていただいた設定項目は新たに追加されたものです。過去に保存された設定には含まれていませんのでご注意ください。ここでの設定を加えて上書き保存していただければと思います。

変換対象

上記の[今期を元期へ変換する]での変換はDrogger-GPSのアプリ内で行なわれ、対象は以下のとおりです。

  • Navigationの緯度・経度・楕円体高・標高 の表示(平面直角座標・UTM表示も含みます)
  • Waypointログ
  • トラッキング CSV GPX ログ (NMEAは除く)
  • Mockプロバイダー経由の他のアプリ

NMEAはTCP、USB、シリアル、ログのいずれも生の値のままで変換は行われません。

変換条件

変換は以下の条件をすべて満たした時に行われます。

  1. 測位日を対象とするパラメータファイルがインストールされている
  2. [今期を元期へ変換する]がON
  3. 単独測位、PPP、またはRTK(VRSC含む)で基準局のアンテナ位置が今期、またはRTKで移動局位置補正がない元期 

移動局位置補正がない元期の場合は、基準局と移動局のそれぞれの位置での補正量の差を移動局座標に適用します。ただし、レシーバのNtripを使用している場合は、基準局位置を取得できないため現在のところ補正はできません。

計算フロー

アプリは測位結果をレシーバから受信すると、

  1. 日時からパラメータファイル選択します。
  2. 測位位置からパラメータファイル内の近傍4点のデータを読み取ります。
  3. 4点の位置と測位位置から双線形補完にて、測位位置の補正値(緯度・経度・高度)を計算し適用します。
  4. 設定に応じて平面直角座標やUTMに変換して表示します。

緯度・経度・楕円体高・標高 の値が元期の場合、Navigationの文字横に 元期を示す(JGD2011_x)と表示されます。今期と不明な場合は、従来通りに何も表示されません。

Waypointログ

表示

Waypointログでは座標の世代も記録されるようになりました。元期では下図のようにポイント名の横にJGD2011_Rと表示されます。


今期の場合は The current 不明な場合は Unknownと表示されます。

ポイントの世代指定

過去のログや、自分で入力したポイントを元期・今期どちらなのかマークできます。

  1. データリストから目的のWaypointを開きます。
  2. マークしたいポイントを長押ししてチェックを付けます。
  3. アクションバーの[...][座標世代][xxxxとしてマークする]をタップします。

元期を今期に変更はできません。一度「世代不明」としてから今期にする必要があります。

ポイントの元期・今期変換

既にあるポイントの元期・今期変換ができます。

  1. データリストから目的のWaypointを開きます。
  2. マークしたいポイントを長押ししてチェックを付けます。
  3. アクションバーの[座標変換][xxxへ]をタップします。

データの日付に基づいてパラメータファイルが選択され変換が行われます。


これでVRSCもリアルタイムに元期座標で扱うことができるようになりました。

My基準局などでは、基準局座標を元期で指定しても、移動局の位置に応じた正確な補正計算が行えます。また、元期で指定することで年度ごとに座標を見直す必要がありません。

お知らせ

今回の更新より、Android 4.xはサポート外とさせていただきました。新しい機能を使うにはAndoroid 5.0以上でご利用いただければと思います。


Enjoy with Drogger

Droggerの詳細・ご購入は https://www.bizstation.jp/ja/drogger/

*1:緯度は150秒、経度は225秒ごとに区切ったポイントでの補正量のリストです