Beyond your wall with Drogger

ドロガーで壁を越えよう

高精度な基準局の構築

今回は、Drogger Processorを使って高精度に基準局のアンテナ座標を測量する方法をご案内します。

まずは正確さについてです。

正確な座標とは

移動局の座標精度は基準局の座標精度に依存する

RTKやSTATICは相対測位で「基準局からの距離と方角」を測っています。

移動局で座標が得られるのは、基準局の座標が分かっているからです。

移動局の座標精度は、スペック表で 1cm + 1ppm CEPなどと記載されますが、これは「基準局からの距離と方角*1」の精度です。普段からトータルステーションなどで測量されている方でしたら、視通の要らないトータルステーションと同じとお考えください。

移動局で得られる座標は、基準局の座標に距離と方角を加えた位置です。すなわち移動局の座標精度は、基準局の精度に依存することになります。移動局の座標を直接使う場合は、基準局の座標が正しい(良い)ことが、まずは大切です。

国家座標

国家座標とはということで国土地理院の定義をみると色々書かれています。わかり易い表現を抜き出しますと「国家座標とは、三角点や電子基準点と整合する座標です。」とあります。

網平均計算

国家座標はある基準日におけるその場所の座標を示しています。時間が経つにつれて地震や地殻変動などで、今現在の緯度・経度の値は基準日とは異なってきます。

しかし、例えば電子基準点 「松本」の座標は2011年から変わっていません。国家座標は、その場所の現在の緯度・経度とは違うものなのです。さらに、電子基準点や三角点などはたくさんあり、その間の距離も長くなったり短くなったりしていることです。

下図はビズステーション株式会社に設置したアンテナの位置を複数の電子基準点を使って位置を求めたものです。 結果は前述の理由などで1点には定まりません。

では、今計ると位置も距離も当時とは異なっているものに対して新しい基準点の座標はどうやってきめるのでしょうか? これを決める方法が三次元網平均という計算です。

三次元網平均計算は、新点を複数の国家座標基準点から測り、地殻変動や誤差などで矛盾した距離を、測量の正確さや重みを鑑みて整合性の良い位置を求めます。これは基本測量や公共測量などでは必ず行われます。

下図の緑色の点がDrogger Processorの三次元網平均計算を行って求めた、アンテナの位置です。

電子基準点の選択

網平均を行う場合は、特にX Y方向それぞれ両側の国家座標から測ることでひずみをバランス良く配分できます。

使用する電子基準点の数は、新点と2つの電子基準点がほぼ直線状に配置できれば2点、そうでなければ3点または4点が理想です。いずれも、電子基準点で新点を挟む(囲む)ようにします。

以下はY型に3つの電子基準点を利用する例です。

まとめると

  • 国家座標は基準となる座標のため頻繁に更新はされず、地殻変動などによって最新の座標とは多少異なっている。
  • 新点を決める際は、既にある近隣の複数の基準点を使って整合性のとれた座標を計算する。
  • 測量などで使う基準局を構築するには、複数の電子基準点を使って網平均計算して得た座標を使う。
  • 利用する電子基準点は設ける基準局を囲むように選択する。
受信機の精度評価法について(参考)

例えば電子基準点Aから近隣の三角点Bまでの現在の方角と距離は、その国家座標差とイコールではありません。ですので、RTKを使って三角点などの位置を測ってもセンチメートル級の受信機の精度評価はできません。

受信機の精度は、精密に測量された2点の一方に基準局を置き、もう一方の点を移動局で測量しそのベクトル(距離と方位)を精密測量値と比較することで行われます。(測量協会などでのRTK法の機器検定はこの方法です)

実践 基準局座標を求める

では実際にアンテナ位置を測量してみましょう。まずは、出来るだけ高く周囲に他に高いものが無い場所に、しっかりとアンテナを固定しましょう。

Drogger Processorを使って、STATIC測量により基準局座標を求めていきます。

RAWデータのロギング

ロギングとDrogger Processorへのデータのインポートの方法は、Drogger Processorユーザーズガイドの方法通りです。ただ、以下点はこのガイドを優先してください。

  1. 観測時間を6時間以上としてください。STATICの場合、概ね4時間くらいまで収束する傾向があるためです。
  2. 基準局のアンテナ位置の測量の場合は、アンテナ高はゼロにし、アンテナ名の後ろに 「PHSCNT」が付加されたものを選択します。例えばアンテナが、HX-CSX601Aであれば「HX-CSX601A PHSCNT」を選択します。
    これを選択しますと、アンテナ位相中心の位置を求めるPCVデータが使用されます。*2

測位ウィザード

ここも、Drogger Processorユーザーズガイドのとおりです。選択する電子基準点は少し多めに選択して構いません。あとで不要な解析を削除します。また、「終点」を選択する必要はありません。解析オプションもまずはデフォルトのままで行います。

観測データの評価

国土地理院では、民間等電子基準点制度を設けています。その制度では観測データの品質に関する基準が設けられています。それに則った評価をしてみます。基準は以下のようになっています。

級別分類 MP1 MP2 o/slps 取得率
A 級 0.6m 以内 0.7m 以内 300 以上 90%以上
B 級 1.2m 以内 1.4m 以内 100 以上 85%以上
C 級 100 以上 85%以上

サイクルスリップ(観測の飛び)率は通常、エポック(データ)数に対するサイクルスリップの数ですが、何故か分母と分子が逆になっています。 マルチパスとサイクルスリップが少なく、信号レベルが高いことが良い観測といえます。

RINGOのダウンロードと配置

評価のためのソフトウェア(たぶん)として国土地理院からRINGO(りんご)というソフトを無償ダウンロードできます。
Windows 64bit版はここをクリックするとダウンロードできます。
ダウンロードした、ringo.exeをPCの"C:\Program Files (x86)\Drogger Processor\Bin\"にコピーしてください。Drogger Processorから数クリックで観測データの評価ができます。

RINGOで観測データの品質評価

RINGOの配置が出来ましたら、以下のように操作します。

  1. [点と観測データ]から、今回観測したデータを右クリックします。
  2. [送る]-[RINGO qc]をクリックします。

メモ帳にて評価結果が表示されます。一番下までスクロールします。
囲みの部分がGNSSごとの結果です。左のG R E J Cが順にGPS, GLONASS, Galileo, QZSS, Beidouです。

マルチパス

MPはマルチパスの略でSTDは標準偏差の意味です。STD(MP1)がL1、STD(MP2)がL2、STD(MP5)がL5のそれぞれのマルチパスの標準偏差(m)です。 これらの数値は小さい方がより良い観測データを意味します。

サイクルスリップ

# of slips/nobsが全体の観測エポックの数に対する、受信機が検出したサイクルスリップ数を示しています。サイクルスリップも少ない方が良い観測です。

GF, MW, IOD(L1)はRINGOのサイクルスリップ検出アルゴリズムによる検出値です。 GF, MW, IOD(L1)それぞれのアルゴリズムについては、以下に記載されています。
https://earth-planets-space.springeropen.com/articles/10.1186/s40623-023-01811-w

この評価は電子基準点の観測データに対しても行うことができます。解析に使った電子基準点も是非確認してみてください。

評価結果からあまり観測データが良くないと思われる場合は、原因を考え対策し再度観測を行います。

解析状態

解析状態は、RINGOではなく、Drogger Processorの[測位データ]タブで確認します。

[解析名]一覧で順に解析行をクリックして確認します。
下図のようにFIX解が上下のふらつきが少なく右に向かって安定しているか確認します。
FIX解がわずかしかない場合や不安定な結果の場合は、RINGOの結果を参考に、再度条件を変えて解析を行います。どうしても良くない場合はその解析行を削除します。

電子基準点の選択

評価に問題がなければ、[Waypoint]-[路線]をクリックして電子基準点の配置を確認します。

上図のような場合、まず遠い2つの電子基準点との解析を削除します。

まずまずのY型ですのでこの3つでよさそうです。

三次元網平均計算で座標を得る

電子基準点の選択ができましたら、以下の操作で計算結果を得ます。

  1. [網平均]タブをクリックします。計算オプションを下図のとおりにします。

    [補正]は2つともON、[推定]はすべてOFF
  2. [表紙]などのタブの下の領域を右クリックします。
  3. [新点のWaypointを生成する]をクリックします。
  4. [Waypoint]タブ [新点]をクリックします。

下図のグリーンの点のように、網平均結果の点がプロットされます。

また、解析結果リストにピンク色のアイコンで計算位置の行が追加されます。この行に表示される緯度・経度・楕円体高が得られた座標です。

受信機の基準局設定

データの中継に弊社のDrogger Ntrip Casterを使用される場合は、この記事のとおりに設定します。手順の中で座標を指定する部分がありますので、上記で得られた緯度・経度・楕円体高を入力します。また、この座標は元期座標です。

下図の方法で、座標をGoogleドライブなどに保存し、Drogger-GPSでインポートすることもできます。

これで高精度な基準局が構築できます。

ヒント
よく、楕円体高は空で良いですか?と聞かれますが、NGです。正しい楕円体高を入れる必要があります。合わせてその楕円体高はアンテナ位相中心の高さとし、アンテナ高はゼロとします。

補足

今回この記事のために、Drogger-GPSとDrogger Processorに各アンテナのPHSCNT(Phase Center)を用意しました。また、電子基準点の改廃と能登半島地震による成果変更に対応しています。

RINGOをインストーラに含めることができればよいのですが、法務的に問題ないか現在確認中です。


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*1:方角は正確には2次元で方角と上下角の両方です。

*2:ただし、民間等電子基準点申請のためのデータの場合は、HX-CSX601A NONEを選択してください。

Drogger Processorの機能アップ

Drogger Processorの機能向上のお知らせです。大きなものは以下の4つです。

  • 平均図、観測図、網図、点検計算図
  • 点検リストで[印刷]チェックの追加
  • 仮定網と実用網の切替
  • 成果のSIMAエクスポート

皆様にご要望いただいてから随分時間を要しましたが、ようやくリリースできました。

順番に説明していきます。

平均図、観測図、網図、点検計算図 (要Commercialライセンス

平均図、観測図、網図、点検計算図の表示印刷ができるようになりました。

  • 図形は基本的にすべて自動で作成されます。
  • ラベルはある程度自動で生成・配置されますが、見栄えをよくするためにユーザーが配置し直すことができます。
  • 網図は国土地理院の基本図の上にレイアウトされます。
  • [点検]タブの点検リストのうち[印刷]欄にチェックのついたものが、点検計算図に描かれます。

ラベル位置などの変更方法

まず、ラベルなどの位置が変更できるのは、今回追加になった平均図、観測図、網図、点検計算図です。

  1. 図を選択し、[編集開始]ボタンをクリックします。

    移動可能なラベルがオレンジ色で表示されます。
  2. 移動したいラベル上でマウスの左ボタンを押したままにします。
    ラベルの周囲に点線枠が表示されます。

    3.移動したい位置に枠を移動してマウスのボタンを離します。
  3. すべての移動が完了したら、[編集完了]ボタンをクリックします。

ラベルのほかに、点検計算の電子基準点間閉合差の図では、路線の概略を示す曲線が表示されます。この曲線を決める4つのコントロールポイントを移動することで曲線の位置やカーブを変更できます。

点検リストで[印刷]チェックの追加

点検リストに[印刷]チェックボックスが追加されました。このチェックが付いたもののみ印刷されます。
点検計算図もこのチェックが付いたもののみ描画されます。また、このチェック状態は、プロジェクトごと保存されます。

仮定網と実用網の切替

仮定網と実用網の切替を容易にできるように改善しました。それぞれのボタンをクリックすることで専用ダイアログが表示され固定点を簡単に選択できます。


成果のSIMAエクスポート (要Commercialライセンス

成果をSIMAフォーマットで出力できるようしました。このSIMAファイルがDrogger GPSでインポートすることができます。

データは、平面直角座標 X Y, H が小数点以下3桁まで出力されます。Hは標高です。

また、ファイルの保存ダイアログで 「成果数値データファイル」形式を選択することで、公共測量 作業規定の基準点測量のフォーマットで出力することも可能です。成果数値データファイルのフォーマットは作業規定の準則に従っています。

その他

プロジェクトフォルダ場所

プロジェクトを開く場合において、マイドキュメント配下でなければならない制限をなくしました。プロジェクトフォルダごと別のPCの任意のフォルダに移動して開くことができます。 ただし、新規プロジェクトに関しましては従来通り、Documents\Drogger_Processorに作成されます。

シグナルレベルの無いRINEX対応

他社のソフトや受信機の出力したRINEX観測データには、シグナルレベルの無いものがあります。この場合、解析時に「最低シグナルレベル」をゼロに設定する様お願いしておりました。しかし気付かずに解析できなかったりする場合が多いため シグナルレベルの記録が無いデータは一律 40dbとして読み込む様にしました。これにより特に設定を変更せずに解析が可能です。

仮定網の形状検査を追加

仮定網は固定点1点で、複数の多角形で構成されている必要があります。網平均計算にて、他に1点しか接続していない点があるかどうかを検出し、あった場合はエラーを表示します。

観測データフィルターの改善

RAWデータのインポート

RAWデータで疑似距離値または搬送波波数値のいずれかに問題があった場合は、そのレコードを破棄するようにしました。まれにこのようなデータによって、単独測位解が得られず、エポック全体がスキップされる場合がありました。

これを原因としてFIXしないなどの現象を回避できるようになりました。

単独測位計算

搬送波測位計算の前にコード測位が行われます。この測位の結果に対して残差が大きいととエポック全体が破棄されます。この大きな残差が発生するタイミングは、搬送波観測のサイクルスリップがある衛星を含む時と概ね一致するため、コード測位時にサイクルスリップを含む衛星データを除外してコード測位を行うように改善しました。
これにより、個別衛星の除外などによらず、安定したFIX解を得られるようになりました。

この機能は、[測位ウィザード]-[Advance Options]-[スマートシグナルフィルター]にてOFFにすることができます。デフォルトではONに設定されます。


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Drogger RZS.D 1級 GNSS測量機に!

たいへん長らくお待たせいたしました。7月に申請したRZS.D + HX-CSX601Aですが、2023年12月4日付けで国土地理院1級 GNSS測量機として登録いただきました。

登録番号はNo235です。(国土地理院 登録機種一覧簿への登録は後日になるそうです)

検定には、Drogger Processorによる基線解析と、観測手簿・観測記簿の出力までが含まれています。

この内容に関する注意点やご質問のされるであろう点についてご案内いたします。

基本測量におけるAndroid端末の機種制限

申請に際して国土地理院より、セキュリティーの観点からキャリア契約の無い専用スマートフォンでの利用を行うように指導を受けております。(対応できない場合は、測量機器登録不可)

対応としまして、提出資料にて
国土地理院の行う基本測量ではコントローラ端末にオプションの DruaForce Pro2 または後継のセキュア端末が必要です。
と追記させていただきました。

国土地理院の基本測量を行う際は、コントローラ端末として京セラ Dura Force Pro2および後継機Drogger-GPSをインストールしてご使用ください。

尚、端末ご購入後にキャリア契約され、SIMを搭載いただくのは特に問題ございません。「キャリア契約の無い専用スマートフォン」をご用意するのは製造販売メーカ-に課されるものであって、ご購入されたお客様に課されるものではございません。

オプションのDura Force EXは弊社購入ページよりお求めいただけます。

・参考資料 国土地理院 提出リーフレット RZS.D

尚、そのほかの測量(公共測量など)は特に指定がない限り、端末の制限はありません。また、Dura Force Pro2とそれ以外の端末での機能や性能差はありません。

機器構成

登録の構成は、RZS.D受信機とアンテナ HX-CSX601Aの組み合わせです。また、基線解析および手簿・記簿出力はDrogger Processorです。

FAQ

Q XパッケージのRZX.Dはどうなりますか?
RZX.Dは、RZS.D + HX-CSX601Aを何の変更のないままパッケージングされますので問題ございません。XパッケージのRZX.Dを機器検定に出される際は、RZX.Dとしてではなく、RZS.D受信機とアンテナ HX-CSX601Aとして受検いただければと思います。

Q 既に販売済のRZS.Dは?
既に販売済のRZS.Dは、申請時と全く同じものですので登録機種です。

Q CLASモデルのRZS.DCは?
こちちらは現状登録機種ではございません。今後申請する予定です。

Q HX-CSX601A以外のアンテナでの組み合わせは?
登録は、RZS.D受信機とアンテナ HX-CSX601Aに限定されます。現状HX-CSX601A以外のアンテナは受信機がRZS.Dであっても1級 GNSS測量機とはなりません。

アンテナPCVデータ

RZS.DのアンテナPCVデータは、Drogger Processorに内蔵しております。これは、NGSで取得できるNGS-14 絶対位相データとは異なります。内蔵データは国土地理院の指定する標準アンテナに対する相対位相データになっています。

アンテナ定数証明書の発行

アンテナ定数証明書とは

アンテナ定数証明書は、アンテナのPCVデータや寸法を記載したもので、基本測量、公共測量など測量業務において諸資料簿の一部として使用します。このような業務でない場合は通常必要ありません。

請求方法

弊社お問い合わせページよりご請求ください。ご指定いただいたメールアドレス宛にpdfにてお送りいたします。

フォームでは、証明書の宛名と弊社から販売させていただいたアンテナシリアル番号の2つを入力いただきます。

当面費用は不要で、無料で発行いたします。


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RTK-GNSS 新体験! 3周波 Mosaic-X5搭載 RZS.D RZX.D

Septentrio社 Mosaic-X5を搭載した、RTK-GNSS受信機 RZS.D をリリースいたしました。合わせて、高性能測量用アンテナを搭載したXパッケージ RZX.Dもリリースしました。

RZS.D

RZX.D

  • RZS.D 139,900 (税込153,890)
  • RZX.D 229,000 (税込251,900)

購入ページ

RZSシリーズの特長

ミリメートルレベル級 RTK

RZS.D・RZX.DのRTKは、水平 0.6cm+1ppmで1cmを下回る精度を誇ります。

RZS.D・RZX.Dでは高性能な高周波回路が採用されています。弊社の従来機と測位結果座標に違いはありませんが、ばらつき(標準偏差)が小さくよりミリメートルレベルにおいて高精度に測位できます。

(RWS + HX-CSX601A 基準局を用い、HX-CSX601Aの受信信号をスプリッターで分岐し、RWS.DCとRZS.Dで同時に受信した測位結果を数時間に渡ってプロットしたものです。平均位置に差は無いもののばらつきは小さくなっています*1。標準偏差を3倍(3σ)すると99.7%のデータがその範囲に入ります。)

補足衛星数の増大

RZSを使った基準局と組み合わせると、特にBeidouにおいてB3対応によりBedouだけで15機以上にRTKで使用されます。山林など環境の悪いロケーションでも多くの衛星が利用できます。

  • QZSS RTK対応
  • Beidou B3I対応
  • GPS L2P 対応

3周波 STATIC

RZS.D・RZX.DはL1 L2に加え、GPS/ QZSS L5やGalileoE5aの同時受信が可能です。Drogger Processorを使ったstaticは3周波で解析が可能です。2周波ではFIXが得られにくい長基線においてFIX解が得られやすくなります。

離島など電子基準点が長基線になる場合などより広範囲に利用できます。(一部を除き電子基準点は3周波のデータがダウンロードできます。)

3周波 基準局

RZS.Dは3周波の基準局を簡単に構築できます。従来モデルでは、一部の移動局に対して整合性を取るためにWindowsのNtripServerを必要としていましたが、RZS.Dではそれらは一切不要です。

  • QZSSのRTCM出力
  • GPS/QZSS L5 , Galileo E5a, Beidou B3IのRTCM出力
  • RTCM 3.1 と3.2の切替可能
  • MSM5 MSM7出力切替可能
  • Trimble独自形式 CMR対応 (今後予定)
  • Ntrip Serverを備え受信機から直接 Nrtip Casterへ送信可能
  • クロックオフセット問題なし
  • Drogger Ntrip Caster 対応
  • Drogger-GPS P2P通信対応

Drogger Processorを使った高精度アンテナ位置測量と合わせて、移動局対応もデータサービス会社と同等の基準局が構築可能です。

当然ですが、RWSシリーズを移動局とした相性もバッチリです。

3周波に対応するため、アンテナは HX-CSX601Aをご使用ください。(2周波アンテナでは3周波出力はできません)

Droggerエコシステム対応

RZS.D・RZX.Dの制御は、Drogger-GPSで従来どおり可能です。GNSSの違いはRZS.DのファームウェアとDrogger-GPSが吸収します。

そのほか、VRSCによるCLASMADOCADrogger ProcessorDrogger Ntrip Casterも従来同様に利用可能です。

RTK、STATIC、基準局、コントローラアプリ、STATIC基線解析から3次元網平均まで、測量のプロの要求に応えます。

RZS対応 アプリなどのバージョン

以前より弊社機器をお使いの方はRZSシリーズに対応したアプリやF/Wへの更新が必要です。

更新方法は、それぞれの上記リンクをご覧ください。

RZS.Dのより詳しい内容はRZS テクニカルガイドをご覧ください。


是非、新しい3周波受信機をご体験ください。


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*1:RMSおよび図の中心は特に意味を持ちませんので無視してご覧ください。

基準点測量精度管理表と点検測量など - Drogger Processor

Drogger Processorの機能拡充のお知らせです。

測量業務に携わるユーザー様からのご要望の多かった測量精度管理表に対応いたしました。合わせて点検測量にも対応しています。

今回、追加・改良された機能は以下のものです。

  • セッション選択方法の改善
  • 日本のジオイド2011 Ver2.2への対応
  • 点検測量のサポート
  • 基準点測量精度管理表の表示・印刷
  • 固定点と座標指定の改善
  • その他

重要 基準点測量精度管理表・点検測量はCommercial ライセンスでのみサポートされます。

順に説明していきます。

セッション選択方法の改善

従来まで複数のセッションを同時選択するには、CTRLキーを押しながら複数行を選択しました。Ver 1.0.2以降は行頭のチェックボックスで選択するようにしました。選択されたセッションの解析が基線解析リストに表示されます。網平均計算は基線解析リストにあるものが対象になります。

選択状態は、Drogger Processor終了時に保存され、次回開いた際に復元されます。

日本のジオイド2011 Ver2.2への対応

東京都硫黄島周辺のデータが追加された「日本のジオイド2011 Ver2.2」が国土地理院よりリリースされました。今後新規作成されるプロジェクトではVer 2.2がデフォルトになります。従来までのプロジェクトでは、以前までのバージョンが使用されます。

尚、変更は硫黄島周辺のみでそれ以外の地域のジオイド高に変更はありません。

点検測量のサポート

精度管理表をサポートするに合わせて、点検測量もサポートいたしました。

セッションダイアログにて、点検測量とマークすることができます。これにより対応する本測量の重複ベクトルが自動的に探索され精度管理表に表示されます。 また、手簿・記簿なども点検測量とマークされます。

詳細はDroggr Processor点検測量をご覧ください。

基準点測量精度管理表の表示・印刷

網平均計算などの結果を取りまとめた、精度管理表の表示・印刷が可能になりました。

詳細は、Drogger Processor 三次元網平均計算をするの精度管理表をご覧ください。

固定点と座標指定の改善

同一点が、複数のセッションにあった場合、従来までは個別に同じ指定を繰り返す必要がありました。今回の改善では、同一点のいずれか一つを変更するだけで同じ点番号のデータがすべて自動で変更されるようにしました。これにより、入力ミスや繰り返しの手間などを大幅に削減できます。

また、固定点のON・OFFにより仮定網/実用網の切替も容易にできます。

その他

較差などの表示順で⊿ENUとなっていたものを⊿NEUへ変更いたいました。

今後の改善ですが、平均図・観測図などといった図や参考資料、RTK・ネットワークRTK法など測量業務への対応を進める予定です。


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高精度 GNSSを学ぼう その2 誤差と測位方式

 
高精度 GNSSを学ぼうの2回目は測位「誤差」のお話です。 その1での測位方法で見ると誤差は無いように感じられるかも知れませんが実際はそうではありません。

誤差は大きく分けて、衛星誤差伝搬遅延受信機誤差の3つあります。

この誤差の問題をどう解決して精度を上げるかが測位方式ということになります。

それでは一つづつ順に説明していきます。

衛星誤差

まず、衛星に関連する誤差です。前回の計算方法では、衛星の時計にズレがなくかつ衛星位置にズレがなければ正確です。しかし実際にはそれぞれズレがあります。

衛星時計

受信機の時計は4つ以上の衛星を使って合わせます。これらの衛星には原子時計が積まれています。しかし、原子時計といえどもすべて同時刻とはいきません。わずかながら違いがあります。 僅かな誤差であっても光の速度で距離を測るため、たった1マイクロ秒でも300mも違ってきます。しかしながら、衛星から放送される航法データの中には衛星の時計誤差情報も含まれています。それを加味すると距離に換算して概ね 2m以下とされています。

軌道誤差

衛星は地上からの制御によって軌道修正を繰り返しながら周回しています。計画した位置からずれたり戻ったりしているわけです。そのため、計算された位置と実際の位置にはズレがあります。

このズレは直線距離に換算して概ね4m以下とされています。

伝搬遅延

電波が衛星を出て地上に到達するまで2万km以上あります。その途中で目には見えませんが、太陽光によって発生する電離層という電子密度の高い層や、地表付近では大気の中を通過します。 この電離層や、大気層を通る際に密度の違いから電波は屈折したり反射したりします。このうち屈折によって、衛星からまっすぐではなくやや長い距離を旅して地上に届きます。これが伝搬遅延です。現象は遅延ですが、電波の速度が遅くなるわけではありません。常に光速です。

まっすぐ届かない簡単な例ですが、よく夏場地面付近でかげろうが出ます。これは、大気密度の変化により光がまっすぐ届かずゆらゆら揺れて届く現象です。このように光や電波は密度の違うところを通る際に屈折し、まっすぐ届かなくなります。

電離層遅延

電離層は主に太陽光によって発生します。ですので日中が多く夜間は減少します。電離層による遅延は2から20mほどになります。この層は均一の安定した層ではなく現れたり消えたりといった変化のある層です。

また、電離層での遅延は電波の周波数の2乗に反比例する特性があります。周波数が高いほど少なくなり光になるとほとんど影響しなくなります。衛星からは実は複数の周波数の電波が発射されています。1つの衛星から同時に2つ以上の周波数を受信できると、測った距離の差から電離層での遅延量を推定できます。

ここで、測位コード信号や補正信号の周波数について書いておきたいと思います。1つの衛星から放送される電波は1種類ではなく複数の電波が放送されています。下表は周波数の高い順に並んでいます。

衛星 種類 周波数(Mhz) 備考
GLONASS L1 1602.00  
GPS・QZSS L1 1575.42  
Galileo E1  
Beidou B1 1561.098  
Galileo・QZSS E6/L6 1278.75  
Beidou B3 1268.52  
GLONASS L2 1246.00  
GPS・QZSS L2 1227.60  
Galileo E5b 1207.14  
Beidou B2  
GPS・QZSS L5 1176.45 古いGPSは非サポート
Galileo E5a  

周波数のイメージのために、東京FMは 80.0Mhz 、WiFi・Bluetoothは2400Mhzです。FMラジオよりは随分高く、WiFiの半分くらいの周波数帯になっています。

当社のRWSシリーズの受信できるシグナルは、GPS・QZSS:・GLONASS:L1/L2、Galieo: E1/E5b、Beidou:B1/B2 となっています。 RWS.DC(M)はこれらに加えてQZSS:L6が受信できます。

大気圏遅延

地表から成層圏までの間には大気の層があります。大気層の上部と地表付近では大きな密度差がありますが、雨など水蒸気を含むと温度差が少なくなり密度変化が小さくなります。このため、大気層での遅延(屈折)は水蒸気の量によって変わってきます。また、荒れた天候などにみられる温度や湿度の激しい変化なども影響します。

この遅延量のみ分離しての推定が難しいですが、衛星の仰角(水平線をセロ度、真上を90°とした角度)により大気の層を通る長さが変化するため、ある程度のモデル化がされています。受信機はこのモデルを使って遅延量の推定を行っています。

この遅延量は概ね数メートルとされています。

マルチパス

上記2つの伝搬遅延と少し異なる遅延です。山やビル、建物などに反射して届く電波を反射波と呼びます。対して、アンテナにダイレクトに届く電波を直接波と言います。 この、直接波と反射波の両方が届くことをマルチパス(複数経路)と言います。反射波は衛星までの直線距離よりも長くなってしまいますので、これを使うと誤差になります。また、混信状態ですので測位信号のタイミングミスにもつながります。

また、反射波しか届かない場合があり、それを使うと完全に間違った位置と推定してしまいます。

受信機誤差

受信機の時計は、原子時計と違い精度の安定性に劣ります。時刻を合わせても直後にはマイクロ秒オーダーではどんどんずれていきます。これをクロックドリフトと言います。安定したドリフトであれば補正が可能ですがドリフトが不安定だと大きな誤差になります。

時計の時を刻む水晶振動子は温度で振動数が変化します。そのため急激に温度が変化しないように空気の対流をなくすなどの工夫が必要です。

ビズステーションの受信機では、特殊な樹脂で封止することで外気温の変化に対して、内部は穏やかに変化するようにして精度を向上させています。

精度の向上

このように誤差にはさまざまなものがあります。また、その大きさはかなり大きくこのままでは、測量に使用できるレベルではありません。しかし、先人の知恵によってこの誤差を取り除き誤差 1cmといった精度が実現できます。精度を向上させるいくつかの技術を説明します。

アンテナケーブルの長さは誤差にならない?

アンテナが別体の受信機では、アンテナケーブルが10mといった長い場合もあります。衛星までの距離を測る場合、受信機からみるとこのケーブルも長さも含まれるはずです。しかし測位される位置はアンテナ位置です。なぜでしょうか?

まず、これまで説明した誤差を含めた距離を計算式にしてみます。

衛星Aまでの距離  = 衛星位置誤差A + 衛星時計誤差A + 伝搬遅延A + 受信機誤差 + 真の距離A

となります。これを違う衛星Bでみると

衛星Bまでの距離  = 衛星位置誤差B + 衛星時計誤差B + 伝搬遅延B + 受信機誤差 + 真の距離B

ここで、衛星AもBも受信機誤差だけは同じであることがわかります。この2つの式の右辺と左辺両方をA-Bの引き算をすると

衛星Aまでの距離 - 衛星Bまでの距離  =   衛星位置誤差A + 衛星時計誤差A + 伝搬遅延A +  真の距離A  -  (衛星位置誤差B + 衛星時計誤差B + 伝搬遅延B + 真の距離B)

となり。受信機誤差が相殺され消えます。アンテナケーブルの長さは受信機の誤差と考えると、これは消えてしまい無関係にできることがわかります。

このように、受信機の位置推定では同じ誤差をは引き算することによって消す処理が行われます。

測位方式

上の引き算は最も一般的な単独測位でも行われます。誤差を推定したり消去したりすることで精度を向上させますが、その方法にはいくつかあり、それが測位方式になります。

単独測位

単独測位は、一つの受信機で位置を求める方法です。

単独測位では、いくつかの誤差を推定したり、外部から得たりしながら位置を求めます。このとき、まず仮の受信機位置を決めます。その位置からの衛星までの距離と実際に計った距離を引き算した値(残差)を複数の衛星で求めます。残差から位置と未知の誤差を推定します。さらに推定された位置を仮の位置にし、残差が基準値より小さくなるまで繰り返えして位置を決定します。

ここで得られる位置は、絶対的は緯度・経度・高度が得られます。

相対測位

相対測位は位置の判っている受信機(基準局)のデータを使って、位置の不明な受信機位置を求める測位方法です。RTKやstaticと呼ばれる方法はこの方法です。 相対測位では、多くの誤差を引き算によって消去できるため、通常単独測位に比べて高精度な測位が可能です。計算方法は、RTKの説明の際にしたいと思います。

相対測位で得られるのは、基準局からの相対的な位置です。

ここでは簡単に測位方法の特徴を表にまとめます。

多くの場合、受信機以外から誤差の情報を受け取って測定値を補正し、より正しい位置を求めます。

概要 距離の測り方 位置決め 精度(一般論)
単独測位 測位衛星からの情報のみで測位します。特別な誤差情報などは他から得ず、受信機自身で誤差の推定などを行います コード 単独 1~ 10m
SBAS (DGPS) SBASは各衛星の誤差などを放送する、GPS L1と同じ周波数の静止衛星です。ここから得られる誤差情報を使って精度を向上させます。誤差情報は、GPSGLONASSが対象で、時計補正軌道補正電離層遅延補正が含まれています。 コード 単独 0.7~2m
SLAS (DGPS) SLASは日本のみちびきL1S信号で放送される誤差情報です。SBAS同様にこの情報を使って精度を向上させます 。誤差情報は、GPSQZSSGalileoが対象で、時計補正軌道補正電離層遅延補正が含まれています。遅延情報は日本を14の地域に区分して地域ごとの情報が配信されます。地域情報は日本国内のみサポートされています。 コード 単独 0.7~2m
RTK RTKはSBAS,SLASのような誤差情報ではなく、別の位置の判っている受信機(基準局)で観測した距離を使い誤差を消去して測位する方式です。リアルタイムで位置を計算するため、基準局の観測データを転送する通信システムが必要です。
RTKの位置推定結果にはFIXFLOATの2種類あります。FIXは正確に波数が確定できた状態、FLOATは波数の確定に至っていない状態です。FLOATになるのはマルチパスやその他の誤差により基準局の観測結果との矛盾が多い状態です。
搬送波 相対 水平 1cm+1ppm
垂直 1.5cm + 1ppm
Static (後処理) Staticは位置を計算する方法はRTKと同じですが、リアルタイムではなくログを取ってあとで解析する方法です。非常に高精度な測位が可能です。
同時に複数箇所でログを取ると1つのデータで複数の基準局とで解析を行うことができます。無料で配布される電子基準点のログを使った解析なども簡単に行えます。
搬送波 相対 水平 0.5cm+1ppm
垂直 1cm + 1ppm
CLAS (PPP-RTK) CLASは、日本のみちびきL6D信号で放送される誤差情報です。GPSQZSSGalileoが対象で、SBASやSLASと違い、より詳細な地域情報と大気圏遅延も含めたすべての誤差を扱うのが特徴です。地域情報は日本国内のみサポートされています。
CLASはPPP-RTKと言う方法で、適当に決めた仮想点と理論上の衛星距離に誤差をプラスして疑似的な観測データを生成しRTKを行います。
搬送波 単独(内部は相対) 水平 6cmRMS
垂直 12cmRMS
(規格値)
MADOCA (PPP) MADOCAは、日本のみちびきL6E信号で放送される誤差情報です。GPSGLONASS, QZSSGalileoが対象で、SBASやSLASより精密で頻度の高い時計補正軌道補正が行われます。そのほかの誤差は受信機で推定するため高精度になるまでに30分から2時間程度の時間を要します。地域情報はありませんので、みちびきが受信できる地域(アジア・オセアニア)ならMADOCAを利用できます。 搬送波 単独 水平 10cm程度

距離の測り方に、その1で説明したコード測位に加えて搬送波が出てきました。

搬送波測位

搬送波とは単に電波の波のことです。電波の利用では通常、音声や映像・データなどを波に乗せて使用します。電波に含まれるデータと区別するため、電波そのもののことを搬送波と呼びます。

コード測位は電波に乗せた信号を使います。コードは約1Mhzでビット間で約300mでした。搬送波は電波の波そのものですので、1つの波の距離は、L1だと 光速/1.5Ghzで約19cmです。 波の数を間違えずに数えられれば19cm単位の目盛になります。300mに比べると圧倒的に細かな目盛になります。

搬送波測位はこの波の数を数えることで、高精度に測位します。RTK、Static、PPP-RTK。PPPなどは搬送波を使った測位方式です。

コード測位は、カーナビやスマホなど一般的な受信機で使われますが、搬送波測位はより高精度な受信機でのみ可能です。尚、搬送波測位の場合も同時にコード測位も行っています。

みちびき

SLAS、CLAS、MADOCAはみちびきからのみ放送される補強信号です。みちびき自体が比較的新しいためこれらの技術も近年になって使用できようになってきています。世界標準ではないためサポート状況は受信機やメーカーごと異なります。カタログなどを見る際の参考になるかと思います。

ビズステーションの受信機では、RWSはSLAS対応、RWS.DC(M)はSLAS、CLAS、MADOCA対応となっています。また、CLAS、MADOCAを受信できないRWS/RZS.DでもL6受信機VRSCを使うと可能になります。

受信機 周波数 搬送波 SBAS SLAS CLAS MADOCA RTK static
DG-PRO1S 1 - - - - - -
RWS 2 VSRC必要 VSRC必要
RWS.DC(M) 2
RZS.D 3 - VSRC必要 VSRC必要
RZS.DC 2 -

今回はすこし込み入った内容になりましたが、上手な利用には避けて通れませんので是非ゆっくりご覧いただければと思います。ここまでの内容でスペック表の主な部分が理解できるようになるかと思います。精度表示とか通信方式とかはまだですが。


次回その3は、高精度なリアルタイム測位を行うRTKについて書きたいと思います。


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*1:RTKやStatic測位で高精度に位置確定できた状態を言います

高精度 GNSSを学ぼう その1 位置を求める

誤差数センチで位置がわかる高精度なGPSがずいぶん安価に使える時代になりました。

そうは言っても魔法の道具ではありませんので、しくみを知って上手に使いましょう。

「高精度 GNSSを学ぼう」では数回に分けて、高精度 GNSSを使うにあたり、そのしくみと知っておくと便利なことを書いていきたいと思います。

GNSSって何?

冒頭で「高精度なGPS」と書きましたが、「GPS」はアメリカの測位衛星の固有名詞です。他の国でも測位衛星を運用しています。それぞれ名前が異なりますので、一般名として測位衛星システムをGNSSと呼びます。

名前 略称
アメリカ GPS GPS
ロシア GLONASS GLO
EU Galileo GAL
中国 Beidou BDS
日本 みちびき QZSS
インド NaviC IRN

このあとの説明では、主にGPSの特性をもとに記載していきます。他の衛星の場合異なることもあります。

どうして位置がわかるの?

よくある勘違いは、衛星の電波を受信すればそこに「あなたの位置はここですよ」と書かれているといったものです。そうではありませんので順番に説明していきます。

衛星からは地上に向けて電波が発射されています。受信機はその電波を受信して衛星から自分までの距離を測ります

3つの衛星の正確な位置が分かっていて、各衛星までの距離を測ったとします。 自分の位置は各衛星を中心とし距離を半径とした3つの球の交わった点になります。

位置は緯度、経度、高度の3次元です。3個の衛星位置とそこまでの距離で、連立方程式をたてて緯度、経度、高度の3つの解を求めます。

どうやって距離を測るの?

衛星から発射された電波には時刻情報が載せられています。受信したときにその時刻を見て、届くまでの時間を計測します。電波の速度は光速と同じで秒速 約30万kmです。距離は以下のように計算できます。

距離 = 30000000m x 到達時間

陸上の100m走のタイムを計る場合ですと、スタートとゴールは同じストップウォッチで測ります。 しかし、衛星と地上では同じストップウォッチを使うことができません。そのため、あらかじめ衛星と受信機の時計を正確に合わせておく必要があります。

衛星には精密な原子時計が搭載されています。受信機はこの原子時計と時刻を合わせて使用します。

余談ですが、GNSS受信機は測位できているとき、原子時計と同期しているので極めて正確な時計でもあります。

時計の合わせ方

先ほど3つの衛星で位置を求めましたが、時計のズレも未知数として1つ多い4つの衛星を使って位置と共に連立方程式を解いて求めます。 測位には3次元の位置と時刻の4つの未知数があるため4つ以上の衛星の受信が必須です。

コード測位

衛星から発射された電波には時刻情報が載せられていると説明しましたが、この情報のことを測位コード信号と言います。この情報はデジタル信号で約 1MHzの1か0のビット信号です。受信機はこの測位用信号を使って時間を測ります。光速を1Mhzで割ると1ビットあたりの距離になりますが、おおよそ300mです。かなり長い距離です。 ビットとビットの間は受信機でより詳細に計測します。1000分割できれば30cm単位で測れることになります。

衛星の位置

衛星の位置が事前にわかっていないとならないことは先に書きました。ではどうやって衛星の位置を得るかですが、衛星は位置を計算するためのデータを自分自身で放送しています。この情報を衛星航法データと呼びます。この情報もデジタルデータです。

受信機はこの衛星航法データと現在の時刻からその時の衛星の位置を計算します。

衛星航法データの受信

衛星航法データの受信には時間がかかります。これは、衛星の高度が2万~ 3.6万Kmととても遠い距離で高速に伝送できないためです。地上に届く電波はとても弱く、例えると1km先のWiFiより弱い電波です。

このため正しく読み取るには受信状態の良いところで30秒かかります。また、このデータは約2時間ごとにより新しいデータになります。一度受信できれば2時間は有効です。

衛星航法データのあれこれ

GNSS受信機を扱うときに衛星航法データにまつわる特徴がいくつかあります。

コールドスタート

GNSS受信機が電源を入れてすぐに位置を得られないのは、衛星航法データを受信するのに30秒かかるためです。 この衛星航法データの無い状態からの測位開始をコールドスタートと呼びます。コールドスタートから測位出来るまでには概ね30~ 60秒かかります

ウォームスタート

衛星航法データは2時間ほど使えますが、受信機の電源を切る前にこれを保存しておけば、再度電源をONにした際に30秒待たなくともすぐに測位できます。これをウォームスタートと呼びます。

ビズステーションで販売しているGNSS受信機は、2時間以上持つバックアップ電池を内蔵していて、ウォームスタートが可能になっています。

インターネットから衛星航法データを得る

衛星航法データは衛星から受信しますが、同じ内容をインターネットから得ることもできます。インターネットから受信して受信機に送ってあげることでほぼウォームスタートと同じようにすぐに測位開始させることができます。 Drogger-GPSではA-GNSSという機能でこれが行えます。

室内での測位

よく、室内で測位できますか?と聞かれることがあります。答えは概ねNOなのですが、室内で衛星を使って測位できることがあります。これは室内でも、減衰して微弱になっていますがかすかに受信できるためです。

ただし、コールドスタートはほぼできません。衛星航法データは意味のあるデジタル情報で、ある程度の受信レベルが必須です。かすかな電波では正しい情報として取り出せないためです。それにくらべて単純なコード信号は低い受信レベルでもなんとかなります。ただ、精度は出ません。

測位できている状態で、外から持ってきた受信機は室内でも測位できますが、室内でコールドスタートした場合はダメということになります。(室内でコード信号がかすかにでも受信できるのが前提です)


今回はざっとGNSS測位の概要を説明しました。この説明だけですととても正確に位置が測れそうですが、実際はさまざな精度を悪くする障害があります。次回はこの位置精度について書きたいと思います。

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